「~みたいな!」を語尾に付け加える口ぐせ。いったい何を「たとえて」いるのか?と思ったら、意味を持たない「ぼかし言葉」だった
言葉は世につれ、どんどん変わって行くものです。
中でも特に
話し言葉の変化は、目まぐるしいです。
毎年発表される「新語・流行語」のような「はやりすたり」のレベルではなく、
「言い回し」そのものがどんどん変わって、そのまま定着しているのです。
下記2つのリンクは、ブログ開設初日に投稿した記事。
日本語の変化(乱れ)が気になったことが、ブログを書こうと思ったきっかけのひとつでもありました。
ひとつが、もはや完全に日本人の言葉遣いの中に完全に定着「してしまった」・・・
「ら抜き言葉」。
そしてもうひとつが、
「~とか」の「乱用」とも言える使用です。
現代日本人は、「とか」の2文字を抜きにしゃべることは出来なくなっています。
さらに、この手の変化の一環として最近特に気になるのが、話し言葉における
「〇〇(文章)。~みたいな!」
の付け加え現象です。
言葉が変化する時、「要らないものを省く」「長いものを略す」方向に向かうのが一般的、と思っていました。
「ら抜き」は、「食べられる」「見られる」「寝られる」とわざわざ「ら」を入れるのが面倒くさくて、しかも意味が通じるので、自然に「ら」が抜けて行ったもの。
そう考えれば、納得は出来なくても理解は出来ます。
長い4文字熟語を2文字に略すケースや、長いカタカナ語を短くまとめた言葉も、たくさんあります。
そうしたトレンドとは逆行するかのように、
「~とか」の頻発は「なくても通じるのに、あえて2文字を付け足す不要かつ不可思議な現象」
と言えます。
「例文」を挙げるなら・・・
「昨日何してた?」の問いに対して、
「渋谷で友達と待ち合わせして、映画を見て、そのあとカフェに行ってお茶して、夜はカラオケに行って…」
と言えば済むものを
「渋谷とかでぇ、友達とかと待ち合わせとかしてぇ、映画とか見たりとかしてぇ、そのあとカフェとか行ってぇ、お茶だったりとかしてぇ、夜はカラオケとか行ってぇ…」
単語や文節の切れ目に、ことごとく「とか」が入り込みます。
こうした言葉遣いを多用する人は、「〇〇だったりとかぁ~」「〇〇してぇ~」のように「語尾を強調して伸ばす」のもセットで口ぐせです。
この「とか」とは、何なのでしょう??
「~みたいな!」も、「~とか」同様、「なくても通じるのに、あえて語尾に付ける用語」として機能しています。
「みたいな」の辞書上の意味は、
「〇〇は、まるで△△みたいなものだ」
のように、あるモノを別のモノに見立てる時に使う比喩の言葉です。
しかし、この「~みたいな!」は、こうした「たとえ」の用法とはちょっと違う。
「~とか」の用法と同じ匂いを感じたので、何か共通した呼び名があるのでは?と思ったところ、たどり着いたのが
どちらも「ぼかし言葉」の一種である
という結論です。
「コンビニ・ファミレス敬語」でよく引き合いに出される「〇〇のほう、よろしかったでしょうか?」の「ほう」。
「わたし的には、良いと思います」の「的には」。
なぜ、「ぼかす」のか?
特に意味を持たない数文字を付け足すことによって、物事を「丁寧に、あるいは婉曲に表現している」気持ちになっているのです。
きっぱりと本心を言い切ることに自信がない。
断定してしまうと、カドが立つと感じる。
そこで、「~とか」「~みたいな」を付け加えることによって、「ぼかす」のです。
全然丁寧な言い方になどなっていないし、「ぼかす」意味合いがわからないのですが・・・
では、「~みたいな!」は実際にどんなシチュエーションで使われるのでしょう?
強く言い過ぎたと思った時、ごまかす
- 将来の目標があるのなら、ゲームばっかりしてないで、もう少し勉強した方がいいんじゃない?~みたいな!
- あの人のファッション、全然イケてなくて、貧乏くさいよね?~みたいな!
ひとり言を客観化する、何かに擬える
- なんか最近、面白いことないんだよねぇ。心から笑えてない~みたいな!
- 家を出たとたんにどしゃ降りになって、会社に着いたら止むなんて。わたしって、ツイテナイ系なんだよね。~みたいな!
演技のセリフのような例え言葉に付け加える
- ドアが閉まりかけのエレベーターにムリヤリ乗ってくるヤツもいるけど、意地悪く「閉」のボタンを押そうとするヤツもいるよね?「どっちもどっち?」みたいな!
- ママ、こんなイイ子に育ってくれて、うれしいわ!あなたって、私の天使かしら?みたいな!
文例は、ほんの一部分。
どんな時にも応用が利く便利な言い回しです。
しかし、話を聞かされた方からは、
「それまでの言葉は、ぼかされるほどの単なる冗談だったのか?!」
と受け取られることもあります。
自分ではもはや「口ぐせ」として無意識のうちに使っているので、「~とか」同様、言っていることにさえ気づいていません。
しかし、話を聞いている相手の立場を考えた時、「ぼかし言葉」の連発はあまり快適な印象を与えないような気がします。