【懐かしい歌No.76 明らかに演歌ではない!ジャズナンバー風】「ウイスキーがお好きでしょ」石川さゆり(1990)
現在の石川さゆりのイメージと言えば・・・
何かよくわからないけれど、「ベテランの演歌歌手」。
最近目立ったヒットはないけれど、なぜか紅白には毎年出場している。
その回数、なんと42回!
女性歌手では最多記録を更新中です。
そして、その紅白では「津軽海峡・冬景色」と「天城越え」を交互に歌うのが定番になっている。
どちらの曲も、すでに10回以上紅白のステージで歌われています。
では、演歌歌手が歌えば、その楽曲は「演歌」になるのか?
楽曲は、歌い手でジャンル分けされるものではないと思います。
少し前、ド演歌歌手の代表格とも言える坂本冬美が、畑違いのフォークデュオ、ビリーバンバンのシングル「また君に恋してる」をカバー、持ち前のこぶしを一切封印して歌い、自身最高位のヒットを飛ばしました。
また古いところでは、1983年。
これまた演歌(ブルース)歌手であった森進一が、ポップス作家の代表である作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一による「冬のリヴィエラ」をリリースし、これも彼の代表曲のひとつになりました。
石川さゆりの発表した楽曲の中で、超異色作とも言える「ウイスキーがお好きでしょ」。
明らかに「演歌」ではなく、シャレたジャズのスタンダードナンバー的な味わいのある楽曲です。
そのタイトルが示す通り、サントリーウイスキーのCMソングに起用されました。
(逆に、まずCMのアイディア・コンセプトがあって制作されたのでしょう)
その後もCMは継続し、多くの歌手によってアレンジを変えながらカバーされているので、曲そのものは耳馴染みがあるかもしれません。
最近のステージ衣装は着物が定番になっていますが、「津軽海峡・冬景色」を発売した頃はドレス姿でした。
この曲も、当然ながら洋装での歌唱です。
彼女がアイドル歌手としてデビューしたのは、15歳だった1973年。
「花の中3トリオ」と呼ばれ一世を風靡した森昌子・桜田淳子・山口百恵とほぼ同期、同年代です。
デビュー曲のタイトルは「かくれんぼ」。
前年にヒットした森昌子「せんせい」に似た「和テイストの歌謡曲路線」でした。
また、初期の桜田淳子と同様「白い帽子」が定番の衣裳でした。
このように歌手生活のスタートは、いでたちも楽曲も「2番手」的。
「中3トリオ」たちの活躍に隠れる形で、あまり注目される存在ではありませんでした。
デビュー3年目ぐらいから、アイドル⇒演歌歌手に転身を図ります。
発表されるシングルも「ちいさな秘密」「あなたの私」など、本格演歌に近いものになっていきましたが、それでもヒットに結びつく作品にはなかなか恵まれませんでした。
「津軽海峡・冬景色」で大ブレイクするのは、デビューして5年目の1977年でした。
ちなみに、「天城越え」はさらに時代を下った1986年の発売です。
15歳でデビューして、周囲が華々しく売れていく中で、焦りや苦悩もあったことと思います。
しかし「あれから40数年」。
かつてアイドルとしてもてはやされた同年代の歌手たちが、みな「伝説」や「あの人は今」になってしまった現在、形はともあれ現役歌手として今も活動を続けている…
堂々の「ひとり勝ち」状態です。