さえわたる 音楽・エンタメ日記

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「Go To Travel」の英語がおかしい。和製英語にもならないヘンな表現。GoとTravelは一緒に使わない。TravelとTroubleは同じ語源

今日からスタートする「Go To」キャンペーンの一環で、世の中に

「Go To Travel」

の言葉が一斉に溢れています。

 

この英語表現に、違和感があります。

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ニュースでこの言葉を聞くたびに、和製英語にもならないヘンな表現」だと感じてしまうのです。

 

ストレートに「Go to travel.」と言えば、「旅行に行きなさい」という意味にはなりそうです。

しかし、そもそもこの言い回し自体が不自然な響きです。

 

第一に、travelは単独で「旅行に行く=動詞」として機能します。

<例文>

I am planning to travel Europe this summer.

(私はこの夏、ヨーロッパを旅行する予定です)

My children are traveling China right now.

(子どもたちは今、中国を旅行中です)

 

第二に、travelは「遠方への旅行」「長期旅行」の意味を持ちます。

上記の例文のような「海外旅行」のケースであれば、この単語が使えます。

 

第三に、travelには上記の「遠方」「長期」につながる「重い旅行」のニュアンスがあります。

トラベル(travel)とトラブル(trouble)。

カタカナで表現すると非常に似ています。

日本人には発音の区別もしにくい単語ですが、英語でも語源を辿ると共通する部分があるのです。

 

聖地巡礼や、日本であれば江戸時代の「お伊勢参りのような大掛かりな移動を伴う旅は、単に「楽しい旅行」というだけではなく、ある種の、時には命がけの「覚悟」を伴う場合もあります。

ダジャレのようですが、「トラブルの可能性を孕む旅」、それが「トラベル」です。

 

そして第四に、通常「Go」と「Travel」は一緒に使われることがありません。

travelという単語自体にすでに「旅行に行く」という動詞の意味があるので、さらにgoを付けると「頭痛が痛い」「白い白馬」のような奇妙な重複イメージになってしまいがちです。

 

「旅行に行く」のニュアンスで、どうしてもGoと合わせて言いたい場合は、travelではなくtripが使われます。

Go on a trip あるいは Take/Make a trip  が英語での「旅行に行く」の一般的表現になります。

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Tripは通常「短い旅行」や「目的を持った外出」を意味します。

出張=「business trip」

修学旅行=「school trip」

 

「良い旅を!」との呼びかけは「Have a nice trip!」。

「Have a nice travel!」とは言いません。

 

「旅」の意味で、もうひとつよく使われる単語にJourneyがあります。

これは、「壮大な旅」あるいは「比喩的な表現(人生という旅のプロセス)」のイメージで使われます。

医師になる道=「My journey to become a doctor」

惑星旅行=「Journey to the planet」

 

その他「旅」に関する類似語として・・・

Voyage=(主に)海上旅行。もともとはフランス語由来(Bon voyage!=良い旅)

Cruise=ヨットや客船による「周遊」。「クルーズ船」でお馴染み。

Tour=観光・巡回公演。ミュージシャンが行うのは「コンサートツアー」。

 

「Go to トラベル」。

違和感は残りますが、カタカナ交じりの3語からなる「メイド・イン・ジャパンのカタマリの固有名詞」として割りきれば良いのでしょうね。