さえわたる 音楽・エンタメ日記

オリジナル作品紹介、歌の解説、ヴァイオリン演奏、言葉の使い方、エンタメニュース、旅行記などについて綴っています

社会人として「プロ」になりきれなかったのは、「就職」ではなく「就社」だったから

見るからにスーツを着こなせていない就活生の姿を街で見かけるたび、彼らのこれからの長い社会人人生に思いを馳せることがあります。

 

社会人になるに当たり、たとえば「会社に入る」選択をした場合、

理系と文系ではルートが異なります。

f:id:saewataru:20191228055505j:plain

理系の場合。

所属していた研究室の指導教授から、それぞれの学生に相応しそうな進路を斡旋されて入社するのが一般的です。

「学生時代に身につけた専門知識がどの会社で最も役立てられるか?」という視点が、そこにはかなり反映されている「ものと思われます」。

 

語尾を推察のスタイルにしたのは、自ら経験していない伝聞情報だから。

自分自身は、理系でなく文系だったからです。

 

文系でも、上記の理系の学生と同様、社会人として通用する専門知識の基礎をしっかり学び、その道に進む意識の高い学生は数多くいます。

「弁護士」「会計士」などは、その代表例です。

しかし「会社員」となる場合は、一般的に理系ほどの専門性は必要とされません。

また、理系のような指導教授からの推薦ルートを利用することなく、自力で「会社説明会」に参加し、「会社訪問」活動を行うパターンが多いです。

 

そして、会社を選ぶポイント

「会社に入ってどんな仕事をするか」

よりも

「規模の大きい、知名度の高い会社にいかにして入るか」

の方が重要な要素であったりします。

 

すなわち、

「就職」活動ではなく、「就社」活動になっているのです。

 

仮に個々人が「会社名」というブランドでなく「やりたい仕事(営業・開発・企画など)」に高い意識を持っていたとしても、会社という巨大な組織側の受け入れ体制がそれに対応しておらず、個々人のキャリア形成が主体的に構築できないケースが多々あります。

 

具体的には・・・ 

「入社したら営業職に就いて、扱っている〇〇製品をバリバリ売り上げて、営業成績ナンバーワンになる」

というビジョンを持っていたとします。

ところが、「就社」活動で入社した先には、営業だけでなくたくさんの部署がある。

社員の配属先は、会社側がその適性を客観的に判断した上、社員自身ではなく会社側が決めるのです。

その結果として、仮に「営業」の仕事がしたくても、希望する部署にならないこともあります。

大規模な組織では、むしろその方が普通かもしれません。

 

もちろん、そこで埋もれていた能力が開花して「結果オーライ」で活躍できる場合もありますが、現実的にそのマッチングはなかなか思い通りには運びません。

 

さらに、会社には「ジョブローテーション」というしくみがあります。

何年かごとに部署を異動させ、さまざまな種類の仕事を覚えさせて、後に経営幹部として育成していくシステムです。

f:id:saewataru:20191228055405p:plain

 

そのルートを辿りながら、いわゆる

「諸事に精通した者」=「ゼネラリスト」

に育て上げられる社員もいる。

 

その一方で、入社以降ひとつの部署にずっと長くとどまり、

その道の専門家=「スペシャリスト」

のキャリアを歩む社員もいる。

 

自分自身は、前者の典型的な「ゼネラリスト」コースでした。

短いと2~3年、長くても5年以内には次々と所属部署が異動となり、時には転勤も経験しました。

在籍期間に比較して、経験した部署の数はかなり多いです。

 

良く言えば「何でも広く浅く知っている」。

組織をまとめ上げるマネジャーとしては、その能力は非常に重要です。

 

しかし、その部署特有の細かいルールや仕事の進め方、あるいは専門的な実務能力になると、その部署の一番新米の社員よりも知識がなかったりする。

異動して初めてそこに着任するわけですから、ある意味無理もない話です。

超基本的なことでも、後輩の人間に教えを請わなければならない場面も数多くあります。

 

「ジョブローテーション」によって、いわゆる「マネジメント能力」や「コミュニケーション力」と呼ばれるスキルは確かに鍛えられます。

「係長」「課長」「部長」と、順調に肩書もついてはきます。

 

その一方、「目に見える」「形としてアピールできる」実務的な専門能力は何も身につけられずに、年齢だけを重ねてきてしまった感もぬぐえません。

 

何でもいい、社内の何らかの仕事に関しての

「プロ」になりきれなかったのでは?

と感じる所以です。

 

f:id:saewataru:20200720093940j:plain

今になってたどって来た道を振り返ると、やはり自分には「就職」意識が低くて「就社」に気をとられていたからかな?と思ったりします。

 

仕事そのものより、会社名という「ブランド」志向。

具体的な「職種」に関するビジョンを持っていたならば、学生時代に専門資格をとる勉強をするなり、語学力を磨くなり、主体的な自己啓発を行って、その成果を生かす方法だってあったはずです。

 

現在の境遇に、特段の後悔があるわけではありません。

ひとりの人間が、その場その場で複数の選択肢を実行することは出来ないのですから、数々の決断の岐路を経て来た今の人生が、自分なりのベストなのだと思うようにはしています。

 

でも、真の意味で

「この仕事に関しては、さえわたるさんはプロだねぇ!」

と目立って言われるスキルを身につけることがほとんどなくここまで来たことは、ちょっと残念だったかな?と感じることはあります。