【懐かしい歌No.44】「恋ほど素敵なショーはない」岩崎良美(1983)
5年前にデビューした姉・宏美を追って、1980年に「赤と黒」でデビュー。
姉とは声質が似ているようでやはり違っており、でも歌唱力は折り紙付きでした。
デビュー同期に松田聖子や田原俊彦・河合奈保子・柏原よしえ(現:芳恵)などがいたこともあり、年齢的にもアイドルのレッテルを貼られてのデビューでした。
しかし、提供される楽曲やその表現スタイルは、ただの「カワイ子ちゃん歌手」(あ!「カワイ子ちゃん」なんて言葉は完全に死語ですね!)のレベルではありませんでした。
彼女のシングルのラインアップには、J-POP離れしたハイセンスで「玄人受けする」楽曲が並びました。
世間の捉える「10代の子はもっとカワイイ歌を歌っていれば売れる」イメージより一歩先行した印象だったのです。
「先を行き過ぎていた」がために、残念ながらセールスが伸びず、「代表作」と呼ばれるような大ヒットはなかなか生まれませんでした。
そんな彼女を一躍有名にしたのは、デビューから5年後。
国民的アニメの主題歌として採用された20枚目のシングル、「タッチ」。
それまでの作品とは方向性のまったく異なる、当時のアニメの主題歌らしい「覚えやすく親しみやすいアップテンポの曲」が(個人的には「皮肉にも」)ヒットに結びついたのです。
でも、私の個人的な興味は「タッチ」より前の曲にありました。
彼女が「タッチ」だけの歌手でないことをご紹介したくて、記事にしました。
この「恋ほど素敵なショーはない」。
1983年に発売された彼女の12枚目のシングルです。
37年前の曲とは思えないほど新鮮なサウンドが、そこには宿っています。
軽快な8ビートに乗せた欧風イメージのメロディーライン、ベースコードを多用した凝ったコード進行に、格調高い洗練されたムードが漂います。
楽曲面での一番の特徴は、激しい転調の繰り返しです。
具体的には、Dフラットから始まって、サビでDへ半音アップ、サビの中でDからCへ、CからBフラットへ、そして終わりはGへ。
ワンコーラスの中でなんと4回も転調し、5つのキーを使っているのです!
転調の仕方には音楽的にいくつかの基本的な「法則」があるのですが、この曲の転調はそんなルールを放棄しまくっています。
それでも音楽的に破綻していないどころか、逆に効果的なインパクトを実現している!
曲を作る者の観点から見ると、そこがスゴイ!です。
そんな目まぐるしいキー変更を追うだけでも大変なのに、サビでは8小節にわたって全部「英語」の歌詞です。
こう歌っています。
Why won't you say I love you
Like moviestars in our musical musical
Why won't you make me dream
Happy endin' like in our musical musical
単語単位で英語フレーズをひとつふたつ入れるのは当時もアリでしたが、これだけ長い「文章単位」での英語歌詞を見かけたことはありませんでした。
この超難曲を、何事もないようにさらっと歌いこなしている彼女は、やはりタダモノではありません。
シングルとして発表した制作陣にも、「名曲を世に出してくれてありがとう」と敬意を表したいです。
(上のリンクの方がシングル盤のオリジナル音源で音質が良いのですが、スマホで再生できない場合、あるいは歌唱シーンをご覧になりたい場合は、下のステージ歌唱版をどうぞ)