心に残る3大偉人伝「野口英世」「リンカーン」「ナイチンゲール」~「伝記」が本になる人物は今後現れるのか
幼い頃、私は「音楽少年」「日記少年」であると同時に「読書少年」でもありました。
自分の部屋には、年齢には不釣り合いな大きな本棚が据えられ、絵本や児童書にまじって「〇〇文学全集」や、いまや骨董品的存在となった「百科事典」1巻~〇巻のような、りっぱなカバー箱に入った分厚い本がたくさん並んでいました。
フィクションの童話を読むのも嫌いではありませんでしたが、興味を惹かれたのは歴史上の人物の生涯を描いた実話である「偉人伝」。
俗に言う「伝記本」です。
中でも印象深く心に刻まれているのが、この3人の伝記です。
<野口英世>
「千円札の顔」としてお馴染み。
医師であり、細菌研究に人生を捧げた学者として知られています。
福島県に生まれ、1歳の時に囲炉裏に落ちて左手を大やけどし、「てんぼう」と呼ばれいじめられた話から物語は始まります。
やけどのために実家の農作業を手伝えず、学問で身を立てようと決意し、貧しくまたハンディキャップを負った中、努力して学業に専念。
上京し医師になった後、渡米しロックフェラー医学研究所研究員となって細菌の研究に従事し、黄熱病や梅毒の研究で名声を馳せました。
ノーベル賞の候補に指名されながらも、自ら黄熱病に罹患し、アフリカ・ガーナにて51歳の若さで亡くなります。
遠く離れた祖国の母との手紙のやりとり(もともと文字の読み書きが出来なかった母・シカが、息子にあてて必死に「ひらがな」を勉強して書いた)のエピソードは、今でも心に響きます。
弁護士・イリノイ州議員・上院議員を経て、アメリカの第16代大統領に就任。
彼の生きた19世紀半ば、アメリカ南部では奴隷制が合法だったものの、北部では違法。
これをきっかけに「南北戦争」が勃発。
そして、これを収束させて南北分断の危機を救い、「奴隷解放」を実現させました。
一方、その混乱が影響して、志半ばで暗殺される運命に。
歴代の大統領の中で最も偉大な人物とも称されます。
彼の行った演説の一節「人民の、人民による、人民のための政治」は、あまりにも有名です。
イギリスの看護師。
統計学者や看護教育学者としても有名な人物です。
彼女の誕生日である5月12日は、「国際看護師の日」に指定されています。
19世紀後半、ナポレオン以降のヨーロッパ域内のナショナリズム台頭による文化的・
宗教的対立から勃発した「クリミア戦争」に、従軍看護師として参加。
現地の看護師の総責任者として活躍しました。
その働きぶりから、「クリミアの天使」とも呼ばれました。
看護師がよく「白衣の天使」と呼ばれるのは、ナイチンゲールに由来するとも言われています。
いずれも、何百年も昔ではない「近い世代」の歴史上の人物。
日本で言えば、江戸末期から明治あたりです。
こうした人物を通じた「現代史」の教育は、現在行われていないのかもしれません。
自分の経験からしても、たとえば高校の歴史の授業は、日本史も世界史も超古代から始まっていき、たいていはなかなか教科書通りに授業が進まず、中世ぐらいで止まってしまっていた記憶があります。
附属高校出身で大学受験が関係なかったという面も十分あると思いますが…。
時代を下った20世紀以降、彼らに匹敵するような「偉人伝・伝記」として語り継がれる人物に出会うことはあるのでしょうか?
功績をあげた大物政治家?
経済発展に貢献した財界の実業家?
名作を世に残した作家・芸術家?
大活躍したスポーツ選手?
有名な芸能人?
該当者は、なかなか見つからないような気がします。