【懐かしい歌No.52】「まちがいさがし」菅田将暉(2019)
いまや、若手トップ俳優と呼ぶにふさわしい大活躍をしている菅田将暉。
「スーパージュノンボーイコンテスト」に出場したり、「仮面ライダーシリーズ」に出演したり…といったキャリアのスタートは、現在多数がひしめく「若手俳優」と大きくは変わりません。
しかし、そのあとの「頭角の現わし方」が、並みではなかった!
芸歴は実質10年そこそこですが、その間俳優として飛躍。
実に数多くの賞を受けています。
オッサンの目から、若い男子のルックスを云々出来る立場ではないのですが…
今風の形容詞を使っての「超絶スーパーイケメン」とはちょっと違う気がする。
しかし、そんなくだらない修飾語など、彼にはまったく不要です。
彼の出演するドラマを本格的にじっくり見たことはありませんが、アイドルイメージやコミカルな役柄からシリアス・不良役まで、「演技の幅広さ」の秀逸さには、まさに天才的なセンスを感じます。
見るたびに髪型や髪色が変わっていても、何の違和感もない。
「何にでも化けられる」のは、俳優としての大きな強みです。
CMキャラクターにもバッチリはまっているし、バラエティーやインタビューの場で垣間見せる「セリフでない実像」も、真に「可愛くて気の良いニイチャン」そのものです。
演技が上手いと評される俳優でも、「素」の部分に性格の悪さが見え隠れしてしまう人物のファンにはなれないものです。
音楽面について。
2013年頃から、テレビでポロポロと弾き語りで歌ったりしていたようですが、「歌手」としての本格的なデビューは2017年。
2017年1月。
映画「キセキ -あの日のソビト-」で、共演の成田凌・横浜流星・杉野遥亮と共に、劇中で「GReeeeN」の前身グループである「グリーンボーイズ」を結成したのがスタート。
そして、同年「見たこともない景色」でソロデビューを果たします。
2018年、ギター弾き語りスタイルのミュージックビデオが印象的だった3枚目の「さよならエレジー」がヒット。
昨年は、この「まちがいさがし」でついに紅白に初出場しました。
どこにでもありそうな言葉。
しかしどこを探しても見当たらないタイトルに、まず惹かれます。
ご存知・米津玄師プロデュースによるこの楽曲。
パワーを感じるミディアムスローのバラードナンバーです。
彼自身のヒット曲、もはや「ラグビーと言えば、のテーマ曲」と化している「馬と鹿」同様、この曲もイントロなしでいきなり歌が始まります。
つい先日、「最近の男性歌手のキーは高くて…」の記事を書いたばかりですが、この曲の場合、サビの高音部もさることながら、Aメロ部分で男性としてもかなりの低音(正確な音名はLow-A)まで使われているのが特徴のひとつです。
ワンコーラス「2オクターブプラス1音」に及ぶ、非常に音域の広い楽曲です。
蛇足ですが、よく「歌が上手い」とされる歌手の褒め言葉として、
「音域4オクターブを超える歌姫」
「7オクターブを持つ素晴らしい歌声」
などお聞きになったことがあるかもしれませんが…
そんな「オクターブ」は、声として出るはずのないまったくのデタラメです!
冒頭から途中Bメロまで、ほとんどピアノ1本のごくシンプルかつ静かなバックのもと、呟くように歌っている。
そのピアノも、4拍子の拍を刻むだけの最低限のサウンド。
その間のヴォーカルをじっくり聴かせるアレンジ上の配慮が施されています。
そしてCメロ~サビの
「君の目が 貫いた 僕の胸を まっすぐ」
から、ドラム・ベース・ギター等のサウンド、そしてバックコーラスが一気に参加。
訴えるようなメッセージ性の豊かな歌詞の世界を、しっかりとサポートしています。
長く伸ばす音が少なく、歌詞の文字数が非常に多い難しい曲ですが、感情を乗せながら巧みに歌いこなしています。
バラードの場合、1番の出だしはきわめて静かに、2番は同じメロディーながら1番サビでの盛り上がりを受けて、1番とは異なるカラオケに乗せて歌うのが「鉄則」である旨を過去記事で述べました。
この「まちがいさがし」もその例外ではなく、1番のAメロと2番のAメロは、バックの楽器構成が違っています。
歌のラストは、「終止形」と呼ばれる「ドミソ」の主和音で終わるのが通常の姿です。
しかしこの曲はそんな固定観念を破り、「ドファラ」(正確にはセブンス入り)の「不安定コード」のスタイルで、あえて「余韻」を残した終わり方になっています。
新しい曲だけれど、「古い耳」を持った人間にもムリなくしっくり来る。
彼自身の、クセのない素直な歌声が心地良いのはもちろん。
加えて、ピアノとストリングス主体のオーソドックスな楽器構成で、ヴォーカルを潰してしまうほどのノイジーなエレキサウンドがないことも、快適に聴ける大きな要因なのではないかと感じます。
若い時だけもてはやされて、年をとるとカンタンに廃れてしまう「イケメン俳優」が多い中、彼は今後も幅広く輝き続ける存在になれる予感がします。
俳優業がメインなので難しいでしょうが、今どき貴重なソロ歌手として、年に1曲くらいは新曲を聴いてみたいと思っています。