【懐かしい歌No.96 夏の終わりのスタンダードナンバー】「少年時代」井上陽水(1990)
夏も終わりに近づくと、今も毎年のようにこの曲がどこかしこで流れます。
発売から30年を経て、すっかり「晩夏のスタンダードナンバー」となった感のある曲です。
井上陽水。
デビューは1969年。
もう50年以上活動を続けています。
当初「アンドレ・カンドレ」というユニークな芸名でしたが、1972年に本名の漢字(本名の読みは「あきみ」)に。
1973年9月に発売された「心もよう」が大ヒット。
それを受けて、半年前にすでにリリースされていた「夢の中へ」も注目されるようになりました。
10年以上経ってから、斉藤由貴がまったく異なるアレンジにてカバーし、こちらもリバイバルヒットしています。
♬探し物はなんですか 見つけにくいものですか
のフレーズは、今でもお馴染みかと思います。
最初に彼の存在が注目されたのは、アルバムの方でした。
同じ1973年に発表された「氷の世界」が、国内で初のミリオンセラーを記録。
当時は、「テレビに出演しない歌手」としても有名でした。
そんな彼が珍しくテレビに露出したとして一躍有名になったのが、昭和の終わりにオンエアされた日産のクルマ「セフィーロ」のCM。
そこで彼が撮影中の車内から放ったのが「お元気ですか?」のひと言。
どうということのない言葉ですが、昭和天皇ご体調悪化の影響で、途中から音声が消されるようになりました。
そんな経緯も、いまや時代の流れで忘却の彼方かもしれません。
彼のナンバーには、聴いても歌っても心地良い楽曲がたくさんあります。
「傘がない」
「ジェラシー」
「リバーサイドホテル」
「いっそセレナーデ」
「新しいラプソディー」
「カナディアン・アコーディオン」
「結詞(むすびことば)」
などなど。
21世紀に入ってからは「コーヒー・ルンバ」や「花の首飾り」など、往年の名作をカバーしたシングルも発売しています。
数あるヒット曲・話題曲の中で最大のセールス実績を残し、人々の心に残っているのが、この
「少年時代」
ではないでしょうか。
歌詞の中に「少年時代」という言葉自体は入っていません。
夏の具体的なエピソードをドラマ化したような歌詞の内容でもありません。
しかし曲の世界に入り込むと、はるか昔小学生だった頃…
自分自身実体験したわけでもないのに、自然豊かな田舎に帰省して、酷暑を気にすることもなく、麦わら帽子をかぶって元気に外に出かけ、虫取りや魚釣りをして遊んでいた…
そんな光景が自然と浮かんでくる気がするのです。
ピアノとストリングス主体のバックサウンドも、美しいです。
「♬私の心は夏模様」
の歌詞ひとつで、いろいろなイマジネーションが膨らんでいきます。
NHKで土曜19時30分に放映の「ブラタモリ」で、オープニング・エンディングテーマを担当。
艶っぽさ健在のその歌声は、今も健在です。