【懐かしい歌No.61】「君がいた夏」Mr.Children(1992)
時が平成に移った1990年代。
ひと時代前「アイドル全盛」と称された音楽シーンは、バンドが主役となりました。
同時期に活躍したグループとして、
「サザン・B'z・ミスチル」
が、ひとまとまりにしてよくトリオで取り上げられていました。
サザンはすでに70年代後半からデビューし、それ以前にも数々のヒットを生んでいましたから、 こういう括り方にはいま一つ賛同できなかったのですが…
とは言え、好き・嫌いは別として、いずれも当時知らない者はいないビッグネームでした。
今日取り上げた「ミスチル」ことMr.Children。
Mr.Childrenの名前が生まれたのは、1989年。
メジャーデビューまでには、3年がかかっています。
その年に発売された彼らのデビュー曲である「君がいた夏」。
自らの青春時代のほろ苦い思い出とシンクロしていつまでも耳から離れず。
「イイ歌だなぁ」と素直に感動し、その時点から注目していたのですが、残念ながら大ヒットにはつながりませんでした。
バンドの名が真の意味でメジャーになったと感じたのは、翌1993年。
4枚目のシングルとなる「CROSS ROAD」が、当時反響を呼んだドラマ「同級生」のテーマソングに採用されヒット。
そして、続く5枚目の「innocent world」が初のミリオンヒットとなり、彼らの名は全国区となりました。
「やっぱり、注目していただけのことはあった!」と、勝手に自分を褒めたりして。
その後の活躍ぶりは、世間に広く知られる通りです。
そこで、ここでは改めて「デビュー曲」にタイムスリップします。
有名になってから発売されたシングルの数々は、ひと言で言うと「言葉よりもリズムやノリ」を重視する作風にシフトしてしまった印象があります。
あまり必然性があるとは思えない「ヨコ文字と日本語のミックス」を多用したり、ひとつの音符に3文字も4文字も言葉を詰め込んで、聴いていても何を言っているのか聞き取れなかったり…。
メロディーラインもキャッチ―で緻密によく工夫して作られているし、歌詞の内容も悪くはないのだから、ヘタに「巻き舌唱法」を取り入れず、もっと素直に「発音」すればいいのに、
注目する存在だからこそ、そんな「個人的要望」を抱いていました。
ここ数年、トシを重ねて少し「丸く」なったせいか、「原点回帰」的色合いを感じることもあるのですが…
いずれにせよ「君がいた夏」は、ある種フォークソングの流れをくんだ素直なサウンドとこれまたシンプルな8ビート、そして流れるようなメロディー運びがストレートに心に響く曲です。
ラスター4小節だけ音が高く飛ぶところも、印象的です。
アコースティック・ギターの素直なストロークに乗せて、晩夏の海を舞台にした若い二人の別れのストーリーが切なく響きます。
弾き語りスタイルが似合います。
結びの部分だけヨコ文字が使われていますが、あとは奇をてらう部分のない「普通」の日本語。
だからこそ、共感・感情移入出来る部分もあります。
ワンコーラス分の歌詞を抜粋してみます。
夕暮れの海に ほほを染めた君が
誰よりも 何よりも 一番好きだった
二人していつも あの海を見てたね
日に焼けた お互いの肩にもたれたまま
一日中 笑ってた
キリンぐらい首を 長くしてずっと
待っていたのが まるで夢のように
また夏が終わる もうさよならだね
時は二人を 引き離して行く
おもちゃの時計の針を戻しても
何も変わらない Oh I will miss you
サビの2行に、
「夏の終わりの恋人たちは、お互いに好きなのになぜ別れる運命にあるのだろう?」
まだ多感さを持っていたさえわたるは、そんなピュアな心を抱きながら、この曲を聴いていました。