【懐かしい歌No.14】「希望」岸洋子、そして林部智史へ
1960年代から70年代を中心に、「夜明けの歌」「恋心」などのヒット曲を生み、シャンソン歌手としても活躍した岸洋子(1935~1992)。
紅白にも7回出場しました。
彼女の代表作のひとつとして1970年に発売され、大ヒットした「希望」。
タイトルのイメージとは真逆の悲しいメロディーライン。
しかし、芯の強い主人公を語った歌詞が魅力的な楽曲でした。
発売当時、彼女はまだ34~5歳。
なんとオトナな雰囲気にあふれているのでしょう!
そして、2019年。
「カラオケバトル」がきっかけで3年前に「会いたい」で歌手デビューし、「泣ける歌手」として知られる林部智史が、自身5枚目のシングルとしてカバーしています。
オリコンランキングでは、14位に初登場しました。
岸洋子の代表的ヒット曲が、星の数ほどある歌の中で再発見され、好きだった歌がまさか50年近くも経ってこのような形で生まれ変わるとは…。
名曲は年月を経ても色褪せない、そんな思いが制作スタッフの共通認識となって、このカバー発売が実現したのでしょう。
個人的にうれしい驚きです。
この曲はA-B-Aのシンプルな形式でしかも3番まであるため、冒頭の「希望という名の~」のAメロが歌詞を変えながら何度も登場し、そのメロディー自体もシンプルなため、すぐ覚えられます。
一方、そんなシンプルな構成の楽曲を「歌いこなし」て「聴かせる」のは大変なこと。
実力のある歌手でないと、出来ない業です。
オリジナルバージョンでは、歌詞にある「また汽車に乗る」「わたしの旅」になぞらえてか、列車の動きを連想させるような静かな8ビートが刻まれるアレンジでしたが、今回カバーでのピアノ&ストリングス主体のバックサウンドも、彼の声質にとても似合っていて良いです。
通常女性の歌を男性がカバーする場合、1オクターブ低いキーにするか、1オクターブまでとはいかないまでも多少キーを下げて歌うのが普通ですが、性別の違いを超えてまったく同じキーで歌われているのが興味深いです。
岸洋子はもともと低音域に、林部智史は高音域に魅力があるがゆえの偶然の一致でしょうか。
(林部バージョンはPCのみの視聴で申し訳ありません)