【懐かしい歌No.94 これぞ大阪ベイブルース!でもタイトルはやっぱりこれ!】「悲しい色やね」上田正樹(1983)
サビの歌詞にもありますが、
これぞ「大阪ベイ・ブルース」!
それが、初めて耳にした時の印象でした。
この曲が発売された80年代前半は、男女ともにアイドル全盛期。
「ザ・ベストテン」「ザ・トップテン」「夜のヒットスタジオ」といった歌番組では、入れ代わり立ち代わりアイドルたちがステージを飾っていました。
そんな中、ひときわ異彩を放っていたのが、しわがれた声の髭面・メガネのオッサンでした。
(オッサン呼ばわりしてしまいましたが、この画像当時、まだ34歳でした)
大阪港を舞台に、別れのシーンを切々と歌い上げる姿に、妙に惹かれました。
セリフが大阪弁なのも特徴的ではありますが、それ以上に心に染み入ったのが、聴き込むほどに深く切ないストーリー展開です。
さらに、このハスキーボイスから歌われる歌詞が「女歌」であるところも異色です。
滲む街の灯を 二人見ていた
桟橋に停めた 車にもたれて
泣いたらあかん 泣いたら
切なくなるだけ
Hold me tight Osaka Bay Blues
「俺のこと好きか?」 あんた訊くけど
Hold me tight そんなことさえ
わからんように なったんか?
主人公の痛いほどの切ない心持ちが伝わってきます。
ここまで語ったあとにようやく訪れる、タイトルフレーズ。
歌詞の流れやメロディーの盛り上がりからすると、タイトルはサビフレーズ
「Osaka Bay Blues」
でも良さそうですが、再び冒頭のAメロに戻ってからの
大阪の海は 悲しい色やね
さよならをみんな ここに捨てに来るから…
まで聴いて、やっぱり
「悲しい色やね」
が正解であると気づくのです。
「ここに捨てに来るから」と最高音まで盛り上げてから間奏に突入する構成…
これも、グッと来る心憎い演出だと感じます。
その部分も含め、メロディーラインも非常に緻密に築かれています。
出だしのニ短調からサビのイ長調への転調は、五線譜上は「ルール違反」に近い超変則的なものになっています。
しかし、その不規則さを微塵も感じさせない、それでいて歌詞の流れとメロディーの動きがピッタリとフィットした作り。
ただただ「感心」のひと言です。
この歌が出て10年以上経ってから、転勤で大阪に赴任しました。
歌の舞台になったであろう大阪港エリアに。
「さよなら」がたくさん捨てられている海辺に。
ちょうど「街の灯が滲む」頃にクルマを飛ばしてみました。
なるほど、実に「絵」になる風景です。
やっぱり、この歌は大阪が似合います。
これをバックに歌を聴いたら、グッときます。
確かに「悲しい色」やった…