【懐かしい歌No.73 タイトルの意味は不明だが、イチオシの代表作】「HOWEVER」GLAY(1997)
1994年にメジャーデビューした頃から、彼らの存在は知っていました。
バンド名は「白でも黒でもない世界」を表現するもの、という話を聞いて、
色の「グレイ」を言いたいなら、「GLAY」じゃなく「GRAY」では?
とツッコミを入れる。
その程度の認識でした。
しかし、熱狂的なファンならずとも、この時代を知る音楽ファンの耳には、無意識のうちに彼らの音楽が入ってくる…
一種の「ブーム」を巻き起こしたと言っても過言ではない、多数のヒット曲・輝かしい実績を持つバンドです。
ヴォーカルを受け持つのはTERU。
作詞・作曲を行うのはTAKURO。
メインヴォーカルが楽曲制作のすべてを担当するケースが多いバンドの中では、珍しい「役割分担」です。
それがガッチリとスクラムを組んで、数々の名曲を世に送り出してきました。
彼らの実績を裏付ける要素は、シングル・アルバムの売り上げ枚数や1位獲得曲数はもちろんですが、「タイアップ」が非常に多いところにも見てとれます。
メジャーデビュー以降、シングルをはじめとするほとんどの楽曲が、CMソングやドラマ・映画主題歌あるいはイメージソングなど、何らかの形でタイアップを展開しています。
そのトレンドは、本年オンエアのCM(「Into the Wild」がSUBARUのCMソングに起用)まで継続しています。
最初は、ヴィジュアルの奇抜さや高音部の多いシャウト系のヴォーカルばかりに耳を奪われがちでしたが、実のところそこに表現されているのは、優しく情感溢れる歌詞の世界と美しいメロディーラインでした。
その「頂点」を極めたと思えるのが、この「HOWEVER」です。
クラシックの小品でも始まるのかと思われるようなピアノと弦楽器アンサンブルのイントロに乗せて、後に登場するサビの「一部分」だけがヴォーカルで表現されています。
聴いた後になってから、このイントロのインスト部分とヴォーカルがセットで「サビ全体」であったことに気づきます。
そしてこのサビが、1番・2番・その後のリフレインの部分でそれぞれ微妙にメロディーやコード進行・歌詞の文字数をアドリブ的に変化させており、歌が進むにつれての高揚感アップを演出しています。
全体としてはスローテンポのバラード形式ですが、エレキギター・ベースのサウンドとインパクトあるビート、加えて細かくシャッフル(スウィング)をかけたリズムが、より強烈な印象を残します。
エレキばかりかと言うと、随所にピアノの音も大きく入っていて、アレンジ上絶妙なスパイスになっています。
驚くのは、この種のロックナンバーにありがちな「英文フレーズ」が歌詞の中に一切入っていないこと。
日本語のみで、情緒感あふれる世界を表現しています。
耳に残るサビの歌詞。
「絶え間なく注ぐ愛の名を 永遠と呼ぶことが出来たなら」
「言葉では伝えることがどうしてもできなかった 愛しさの意味を知る」
一流の作詞家は、「愛してる」のひと言をこのように表現するのか…と。
さらに、これも意図的なことだと思いますが、歌い出しと結びの歌詞が(メロディーは違いますが)なんと一緒。
「柔らかな風が吹く この場所で」
さらにさらに…
タイトルが歌詞にない。
「HOWEVER」は、日本語にすれば「しかしながら」。
この言葉の意味するところは、何なのでしょう?
もはや、凡人には理解し難い境地です。