【懐かしい歌No.91 子役出身のスパーク3人娘が洋楽に挑戦】「あなたしか見えない」伊東ゆかり(1978)
今日も「おそらくこの場でしか耳にされることがないであろう」懐かしい歌を取り上げます。
歌い手の名は、伊東ゆかり。
1960年代の歌謡シーンを語るのに欠かせない存在のひとりです。
小学生時代から進駐軍キャンプで歌い始め。
そして、11歳だった1958年「かたみの十字架/クワイ河マーチ」で本格レコードデビュー。
10代の頃は、洋楽のカバーを多く歌っていました。
そして、1967年にリリースした「小指の想い出」。
♪あなたが噛んだ 小指が痛い 昨日の夜の 小指が痛い~
印象的な歌詞で始まるこの歌は、当時知らぬ者はいないほどの「国民的なヒット」となりました。
シンプルきわまりない覚えやすいメロディーとともに、彼女の一番の代表作として、その後も長く歌い継がれています。
その後も「恋のしずく」「朝のくちづけ」「知らなかったの」など立て続けにヒット曲を飛ばしました。
同時期に日本のポップス界を牽引した中尾ミエ、園まりと三人で 「スパーク3人娘」 を結成。
日本の歌謡界は、何かというと「3人組」を作りたがります。
この「懐かしい歌」の連載でもたびたび取り上げていますが…
ジャニーズユニットでも、シブがき隊や少年隊は3人組でした。
女性歌手の元祖三人組は、美空ひばり・江利チエミ・雪村いづみによる「三人娘」。
1970年代には、小柳ルミ子・南沙織・天地真理が「新・三人娘」と呼ばれた時期がありました。
そして、森昌子・桜田淳子・山口百恵による「花の中3トリオ」。
それぞれソロ歌手なのに、同じ時期に活躍した彼らを3人「まとめて」取り上げたがります。
不思議です。
「スパーク3人娘」は、時代的には「元祖・三人娘」の次の時代に位置します。
ただ、現在でも3人揃ってのステージ活動を継続していることを考えると、最も息の長いトリオと言えるかもしれません。
(このトリオのリーダー格は、圧倒的な話術で現在も「芸能界の辛口ご意見番」として活躍する中尾ミエです…)
この曲は、全盛期の活躍から少し時代の下った1978年の発売。
画面のクレジットにもあるようにアメリカのオリジナル曲に、作詞家(名訳詞家でもある)なかにし礼が詞をつけています。
「♬愛さずにいられない あなたしか見えない~」
のフレーズが、ストレートでなんとも印象的です。
1番の最後の「見えない~」の部分で一瞬転調。
さらにエンディングに向け、途中で「+1」キーアップして盛り上げる。
ラストではヴォーカルが超ロングトーンで声を伸ばしているウラでまたも転調し、オリジナルキーとはまったく異なる終わり方をしています。
そうしたテクニックはさておき…
オトナの雰囲気漂うラブバラードを、切々と歌い上げる姿が印象的です。
「小指の思い出」を歌っていたのがまだ20歳そこそこだったのも今から考えるとスゴイことですが、この映像当時でもまだ30代に入ったばかりという事実に驚かされます。
このようにしっとりとバラードを聴かせる歌手は、男女問わずもう生まれない時代になってしまったのかもしれませんね。
演歌歌手は今でも「ソロ」が多いのに、ポップスではみんなグループを組むのも、考えてみれば不思議な現象です。