さえわたる 音楽・エンタメ日記

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「イケメン〇〇」「美人〇〇」は、必ずしも「文句なしの褒め言葉」にはならない気がする

女性に対しての「美人」「美女」という言葉は、昔からありました。

最近はほとんど聞かれなくなりましたが、「べっぴんさん」などという粋な表現もありました。

 

しかし、男性に使う「イケメン」なるカタカナ言葉の歴史は、比較的新しいような気がします。

女性向けに、「イケウイメン」(?)などと呼ぶことはありません。

 

「イケメン」が登場する前、男性のルックスの美しさを表現する言葉には

「二枚目」「ハンサム」「男前」「美男子」「イイ男」

などがありました。

しかし、こうした言葉を耳にする機会はほとんどなくなりました。

 

それぞれ微妙にニュアンスが異なり、素敵だなぁと思います。

それが、現在はすべてが「イケメン」に統一されている感があります。

これだけでも、ボキャブラリーの衰退を感じます。

 

さらに、「美男」「美女」を強調する言葉として、

「絶世の~」

という形容詞がありましたが、これもまた死語になりつつあります。

 

それに代わる言葉は、「超~」でしょうか。

なんでもかんでも「チョー」をつければ済んでしまう時代です。

同時に「美人すぎる」などという妙な表現も生まれました。

 

saewataru.hatenablog.com

 

特に芸能人は、なんだかんだ言いながら「見た目」の良さが評価のポイント。

性別問わず、まずは「美しさ」が求められがちです。

 

特に、新進の若手俳優(男子)が注目され始めた時には、ほぼ例外なく

「イケメン若手俳優

という「冠」をつけて称されます。

「イケメン」は、もちろん美しさの褒め言葉。

「若手」にしても、若いこと自体がフレッシュな魅力。

ダブル形容詞の称えようです。

 

イケメン礼賛は、主人公以外にも使用されます。

たとえば、女性有名人が一般男性と結婚を発表する時のコメント。

「お相手は、IT企業に勤務するイケメン」

「お相手は、イケメン青年実業家」

「ロケバスの運転手さん」がイケメンと報道されていたかどうか覚えていませんが、カッコ良さそうなイメージの仕事に就いている人は、どうやら例外なくイケメンのようです!

 

「イケメン〇〇」と称されるルックスの良さは、注目・評価されるポイントのひとつにはなり得るでしょう。

しかし、

その人の真価はむしろ「イケメン」の後に来る「〇〇」の部分で問われるのではないか?

と思うのです。

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たとえば俳優の世界。

「イケメン俳優」と呼ばれる場合。

ドラマや映画の世界で「本当に」評価されるべきは、「イケメン」の方ではなく「俳優」の部分。

その容姿ではなく、「仕事ぶり」。

つまり「演技の実力」です。

ドラマや映画で顔立ちの整った人ばかり集まっても、お話になりません。

ルックスは、ある程度「必要条件」なのかもしれませんが、決して「十分条件」ではないはずです。

 

先ほどの「IT企業社員」や「青年実業家」なら、ルックスで仕事をしているわけではないので、なおさらです。

 

女性の「美人〇〇」にも、同じようなことが言えます。

よく使われるのが、アナウンサーに対しての「美人女子アナ」

アナウンサーはマスメディアに登場するので、ある意味「半・芸能人」のような存在です。

「見た目」が重視される要素が大きい面も確かにあります。

 

「美しくないより、美しいと言った方がいいだろう!」

と言う人もいるかもしれません。

しかし、アナウンサーに対して本当に求めたいのは、そのアナウンス能力です。

顔が良くても、しゃべりがヘタであれば、アナウンサー失格だと思います。

 

一時「美人すぎる市議」という言葉が流行りました。

代議士は、芸能人ではありません。

率直に言って、きちんと政治をやってくれれば、容姿など問うものではありません。

 

自分が重い病気にかかって、手術を受けることになった場合。

言うまでもなく、

ウデの不確かな「イケメンドクター」より、敏腕の「ブサイクドクター」に命を預けます。

 

褒め言葉のつもりで使われているはずの「イケメン」「美人」。

あまりの乱用ぶりに、その響きがなんだか軽く感じられてしまいます。