さえわたる 音楽・エンタメ日記

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【たまには童謡もいかが?】作曲コンクールで、誰もが知るあの「夏」「秋」「冬」の童謡作曲家に直接会って受けた最初で最後のメッセージ~全都道府県旅行記・鳥取県

昨年の記事で、「創作童謡コンクール」なるイベントに参加したことに触れました。

このコンクールには通算5回入賞。

本選に出場するたびに、会場となった鳥取県の各都市を訪れています。

47都道府県の中で最も人口の少ない鳥取県ですが、個人的には今でも非常に思い入れの強い土地のひとつです。

 

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コンクールの際に審査員のひとりであったのが、20世紀を代表する作曲家・中田喜直先生でした。

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「作曲家」と言っても、ふだん取り上げているいわゆる「はやり歌」の作り手ではなく、童謡や文部省唱歌・合唱曲などが主なジャンルです。

 

ここに挙げた「夏の思い出」「ちいさい秋見つけた」「雪の降る街をは、いずれも先生の作曲によるものです。

いずれの歌も、いっときの流行ではなく、老若男女問わず誰もがそのメロディーを知っていて、時代を超えて長く歌い継がれる「国民的唱歌と言える名作ばかりだと思います。

 

ほかに、「童謡」のスタンダードナンバーになっている「めだかの学校」「かわいいかくれんぼ」などの作品もあります。

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コンクール終了後の打ち上げで先生と初めてお会いし、いろいろお話をしたり、やコンクール出展作へのアドバイスなども受けたりする機会がありました。

 

その場で直接お聞きしたエピソード。

 

ここに挙げた3作は、「夏と言えば『夏の思い出』、秋が来れば『ちいさい秋見つけた』、冬になり雪が降れば『雪の降る街を』がすぐ出てくる」ほど、どれも有名な曲ばかり。

しかし、なぜか「春」を歌った曲がない

 

「不思議ですねぇ?」と尋ねたところ、すかさず先生曰く…

「父が作曲した有名な春の歌があるから、私は父に敬意を表して、春のヒット曲は作らないことにしたのです」と、半ば冗談めかして語られました。

それが、お父上の中田章氏が作曲された代表作、「早春賦」だったのです。

言ってみれば、親子で「四季」を完成させた、ということだったのですね。

 

そして、「歌づくり」をする上で先生から直接受けた「最初で最後の」アドバイス

 

「メロディーは言葉に乗せて歌われて、初めて『歌』として完成する存在」

「美しい日本語のリズムやイントネーションを崩さずに大事に扱って、曲を作るように」

 

そう言われてみて、先生の作品を改めて聴いてみると…

本当に、歌詞のアクセント・イントネーションを大切に、忠実にメロディーが付けられていることに気づき、驚かされます。

 

たとえば「夏の思い出」の冒頭の一節

「なつがれば おもいだす はるかなぜ とおいそら」

を「音符なしで朗読」してみると、本当にイントネーションの高低に合わせて、きわめて自然な形でメロディーが付けられていることがよくわかります。

 

歌づくりを手がける人間として今も忘れることのできない、「座右の銘」にしている重いメッセージです。