さえわたる 音楽・エンタメ日記

オリジナル作品紹介、歌の解説、ヴァイオリン演奏、言葉の使い方、エンタメニュース、旅行記などについて綴っています

【懐かしい歌No.70】「香水」瑛人(2019)

この連載記事のタイトルは「懐かしい歌」。

いつもは十数年、何十年前の歌を取り上げるのですが、今日は先ごろ不意に耳に残った

「懐かしくない新鮮な」歌です。

 

すでにSNSで話題沸騰中ですので、直近の歌好きの方であれば(好き嫌いは別として)ご存知であろう

瑛人「香水」。

 

まさに「彗星のように現れた」22歳のシンガーソングライターによる作品。

久々の「若手男性ソロ歌手」の登場です!

 

苗字のないアーティストネーム。

歌のタイトルも2文字熟語のみ。

どちらも超シンプルです。

 

数年前から今年の初めぐらいまでにかけては、「グループアイドルソング全盛」のご時世でした。

典型的には「AKBグループ」「坂道グループ」に代表されるものです。

ところが昨今の状況を受けて、彼女らにとって絶好のPRイベントであった「握手会」が開催できなくなりました。

「握手券」を求めるためだけにCDを購入していたファンは、CDに目を向けなくなってしまいました。

それどころか、彼女らの「新曲CD発売」さえも覚束なくなってきました。

それぞれのグループが週替わりで攫って行った「シングルCD売り上げ枚数1位」の座は、いよいよ意味をなさなくなってきました。

 

最近のヒットチャート・ランキングは、CDの売り上げ枚数でなく、むしろ配信ダウンロードの実績をメインとした「ポイント制」を採用しています。

そのせいもあってか、

何か月も前にリリースされた歌がチャート上位にロングヒットとして残り続ける「古き良き時代」のチャートアクションに似た様相を呈しています。

直近「オリコン」の週間チャートでも、1位から10位までのうちなんと5曲が半年以上前の昨年中に発売された作品。

歌が「使い捨ての消耗品」から「長く愛される存在」に戻ってきたのは、喜ばしい傾向です。

 

今日取り上げた彼の歌も、その5曲のうちの1曲。

リリースされたのは1年以上前、昨年の4月です。

リリース直後はあまり話題を呼びませんでしたが、その後「Tik Tok」をはじめとするSNSYouTubeなどで

「歌ってみた」「弾いてみた」

などの動画が次第に拡散。

人気に火がつき、先月の「オリコン」チャートでは「合算シングル」の部でついに1位。

今週も3位にランクインしています。

もうひとつの権威あるチャート「ビルボードジャパン」でも1位を獲得する大ヒットに至りました。

 

最大限に驚くのは、「CD発売なしの配信のみ」でここまでの人気になったという点です。

かつてCD、古くは「レコード」を通して音楽に親しんできた人間にとっては、時代の変遷をつくづく思い知らされます。

 

リリースに関わるこうした独特なプロセスもさることながら、楽曲自体のユニークさにも耳を奪われます。

 

グループアイドルやアニメソングシンガーユニットに特徴的に伺える

「音程を外しているオンチではないけれど、『集合体』であるがゆえの機械的で無機質なヴォーカル」が世に溢れる中、

「素朴に、しゃべるように歌う、素直で『肉声』を感じられるヴォーカル」

が新鮮で、スッキリと耳に入って来ます。

 

高校の野球部あたりにふと紛れていてもおかしくなさそうな、芸能人らしくないごく普通のルックスのニイチャンが歌っている点もユニークです。

片想い、はたまた恋愛崩壊を思わせる、何とも切ない男心を歌っていますが、あえてさりげなく突き放しているような世界にも思えます。

 

サビフレーズの語尾

別に君を求めてないけ「ど」
横に居られると思い出「す」

の「投げやり」風な歌い方も特徴的です。

さらに、ブランドの固有名詞が登場するのも珍しい!

ドルチェアンドガッパーナ

で、カッコよく発音せず「ど~るちぇ あ~んど がっぱーな」

とあえて日本語的に発音しているのも、それはそれでアリと思えてきます。

 

ラストのラストも、メロディーに乗って同じ歌詞「♬その香水のせいだよ」の繰り返しで締めくくられるのか?と思いきや、ここだけ

「僕が振られるんだ」

で終わる。

淡々と歌われているだけに、却って切なくなります。

 

歌の「基本」とも言える4分音符と8分音符を主体とした、決して難し過ぎない、弾き語りに乗せてすぐ歌えそうなメロディーライン。

サビも覚えやすく、さりげない中に緻密な音取りが感じられる楽譜です。

本人の作詞・作曲なので、言葉とメロディーのマッチングも申し分ナシです。

あえて言えば、意外に音域が広くて、低音部もきちんとクリアした上で歌おうとすると高音部が苦しくなる…ことぐらいでしょうか。

 

今どきギターだけでフルコーラスが貫かれているのも、大きなチャレンジです。

さまざまな楽器や音響効果が駆使されるのが当たり前になっている最近のオフィシャルビデオの中で、ギター以外の伴奏ナシ、ヴォーカルをサポートするコーラスもナシ。

徹底的に「歌ってみた」「弾いてみた」に寄り添った作りになっています。

 

 <歌詞全編>

夜中にいきなりさ
いつ空いてるのってLINE
君とはもう3年くらい
会ってないのにどうしたの

あの頃僕たちはさ
何でもできる気がしてた
2人で海に行っては
沢山写真撮ったね

でも見てよ今の僕を
クズになった僕を
人を傷つけてまた泣かせても
なにも感じ取れなくてさ

別に君を求めてないけど
横に居られると思い出す
君のドルチェアンドガッパーナの
その香水のせいだよ

 

今更君に会ってさ
僕はなにを言ったらいい
可愛くなったね
口先でしか言えないよ

どうしたのいきなりさ
タバコなんかくわえだして
悲しくないよ悲しくないよ
君が変わっただけだから

でも見てよ今の僕を
空っぽの僕を
人に嘘ついて軽蔑されて
涙一つも出なくてさ

別に君を求めてないけど
横に居られると思い出す
君のドルチェアンドガッパーナの
その香水のせいだよ

別に君をまた好きになることなんて
ありえないけど
君のドルチェアンドガッパーナの
香水が思い出させる

 

なにもなくても楽しかった頃に
戻りたいとか思わないけど
君の目を見ると思う

別に君を求めてないけど
横に居られると思い出す
君のドルチェアンドガッパーナの
その香水のせいだよ

別に君をまた好きになる
くらい君は素敵な人だよ
でもまた同じことの繰り返しって
僕が振られるんだ

 

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