【懐かしい歌No.71 歌手活動集大成のミディアムバラード】「ただ泣きたくなるの」中山美穂(1994)
女性アイドル全盛の1980年代をリードしたトップアイドルだった中山美穂。
中1の時に「原宿でスカウトされた」のが芸能界入りのきっかけだったというエピソードも、いかにもアイドルらしいシンデレラストーリーです。
デビューは、まず女優としてでした。
1985年、当時14歳でTBS系ドラマ「毎度おさわがせします」にツッパリ少女役として出演。
新人ながら、「型通りの清純派」とはひと味違ったキャラクターを演じ切り、一躍注目を集めました。
同年6月、作詞:松本隆、作曲:筒美京平のゴールデンコンビによる作品「C」で歌手デビュー。
同期には、
本田美奈子.、南野陽子、井森美幸、森口博子、斉藤由貴、浅香唯、芳本美代子
といった錚々たるメンバーがいました。
そして、あのおニャン子クラブもこの年のデビュー。
並みいるライバルたちの中、この年の「日本レコード大賞最優秀新人賞」を受賞しています。
同時期に活躍した工藤静香、南野陽子、浅香唯とともに、「ポスト・花の82年組」的位置づけで、「女性アイドル四天王」と呼ばれたこともありました。
歌手として、1位獲得作品が8作。
1992年に「中山美穂&WANDS」名義で発売された「世界中の誰よりきっと」がミリオンヒット。
初期の作品は、軽快なリズムに乗ったポップな作品主体でしたが、その後「You're My Only Shinin' Star」「ROSÉCOLOR」などのバラード曲も発表し、これらの楽曲も1位を獲得して、彼女の代表作となっています。
どの歌も秀作揃いですが、現時点で最新(最後?)の1位獲得曲となったミディアムテンポのバラードナンバーである、この
は、単独名義での初ミリオンヒットとなり、彼女の輝かしいディスコグラフィーの「集大成」とも呼べる作品なのではないかと感じています。
イントロから、格調高いストリングスのアンサンブル。
自分がヴァイオリンをやっているからかもしれませんが、弦楽器の合奏を主体としたアレンジは、楽曲全体に「美しい安定感」をもたらしているように感じられます。
強めのドラムのビートも、ヴォーカルのジャマをせずしっかりサポートしています。
サビフレーズでは、それまでの彼女の楽曲には見られなかった高音が多く使用されています。
歌唱力のレベルアップぶりを認識させられます。
タイトルの言葉を含む歌詞の切なさとも相まって、ロマンチックなムードを醸し出しています。
この曲には、メロディーライン上の珍しい特徴がひとつあります。
この連載でたびたび触れているように、ワンコーラスは通常「Aメロ⇒Bメロ⇒サビ」とだんだん盛り上がっていく構成で作曲されています。
そのため必然的に、Aメロとサビは「色合いが異なる」ものになります。
ところがこの曲は、Aメロの出だしとサビの出だしのメロディーが「まったく同じ」という非常に珍しいスタイルを採用しています。
それでも、構成に破綻をきたすことなくこれだけの仕上がりになる。
メロディー作りの「奥深さ」を感じさせられます。