さえわたる 音楽・エンタメ日記

オリジナル作品紹介、歌の解説、ヴァイオリン演奏、言葉の使い方、エンタメニュース、旅行記などについて綴っています

【懐かしい歌No.64】「手紙~拝啓 十五の君へ~」アンジェラ・アキ(2008)

ステージでメガネをかけ、ピアノを前に躍動的に弾き語りをする姿が強いインパクトを与えるシンガー、アンジェラ・アキ

 

どちらもファーストネームのような名前ですが、婚姻前の本名は、安藝 聖世美 アンジェラ(あき・きよみ・あんじぇら)、つまり「あき」は苗字。

アメリカ人を母に持つ彼女ですが、日本風に言えば「安藝 聖世美」。

(だいぶイメージが変わりますね)

アーティストネームも、ほぼ本名なのです。

あの「濃い」顔で、いざしゃべると徳島弁というのも、なんだか親しみが湧きます。

 

それはさておき…

2005年に「HOME」でデビュー、翌年この曲で紅白に初出場。

2008年に発売された8枚目のシングル、この「手紙~拝啓 十五の君へ~」がロングヒットとなり、紅白でも2回連続で歌われています。

 

そして何と言っても、

「第75回NHK全国学校音楽コンクール 中学生の部の課題曲」

つまり「合唱曲」として採用されたことが、この曲の大きな特徴です。

もともとそうしたコンセプトで制作されたのか、曲がリリースされてから評判が高まって使われるようになったのか…

 

最近は、手書きで「手紙」を書く機会はほとんどなくなりました。

そんな時代だからこそ、二度と戻らない15歳の世代に悩み多きタイムスリップして、未来の自分とメッセージを交わすコンセプトが、聴く者に共感を与えたのではないかと感じています。

 

曲調をあえて挙げるなら、ミディアムなバラードナンバーということになるのでしょう。

バラードというと、これまでの曲紹介でたびたび触れているように、本当はもう少しテンポが遅く、かつ楽譜上は16分音符主体のメロディーラインとロングトーンとの「コントラスト」で構成されているのが通常のスタイルです。

 

ところがこの曲の場合は、ピアノがアルペジオをバックにして、8分音符主体の流れをサポートしています。

歌う部分のメロディーも、「極端に長い音」もなく、「極端に細かいリズムの音」もなく、一貫して8分音符がずっと続いていきます。

「弾き語り」を前提にしなければ、出来上がらなかったアレンジとも言えそうです。

さらに、バックサウンドとして定番といえるドラムが、この曲には使われていません!

これほど首尾一貫してピアノを主体にしたサウンドは、最近の曲ではかなり珍しいです。

 

そして、2番が終わったあと突然キーとリズムパターンがガラッと変わるDメロに驚かされます。

まったく別の歌をジョイントしたかのような、大胆なコントラストです。

そこから戻って一瞬静かなサビフレーズへ移行するところが、この曲のスパイスとなっています。

 

さらに、通常はサビで盛り上がって終わるのが一般的な楽曲構成であるところ、冒頭Aメロに戻って消え入るように終わるところが、聴く者に静かな余韻をもたらしています。

 

冒頭はルックスに触れましたが、ほぼピアノだけのアレンジでここまで聴かせられるのは、やはり作品としての完成度の高さに加えて、彼女自身の天性の美声とパワフルかつ繊細な表現力によるものが大きいと思います。

演奏するアクションが派手なだけでなく、鍵盤に込められる各々の指もパワフルであることが感じ取れます。

 

自分の15歳の時に、ふと思いをはせてみたくなる曲です。

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