【懐かしい歌No.67】「ひだまりの詩」Le Couple(1997)
フジテレビ系で放映された話題のドラマ「ひとつ屋根の下2」。
その挿入歌に起用されるや、じわじわと人気に火が付き、「紅白」にも出場しました。
英語で「ザ・カップル」を意味するフランス語「Le Couple」=「ル・クプル」。
曲の販売当時は、「夫婦」でした(過去形)。
メインヴォーカルの藤田恵美は、小学生の時から子役として芸能界で活動。
「ひまわりキティーズ」なる児童コーラスグループに所属していました。
左卜全の伝説のヒット曲「老人と子供のポルカ」のバックコーラスを務めていたことが、この曲のヒットで明らかになりました。
(「やめてけれ!やめてけれ!ズビズバ~!パパパヤ~」がものすごいインパクトだった…)
1990年に結婚し、夫婦コンビで「Le Couple」としての活動を開始。
5枚目のシングルにして、爆発的なヒットとなりました。
穏やかで透明感のある、そしてどこかしら懐かしさや切なさも感じられる、とても魅力的なメロディーだと感じます。
「形容詞」はいくらでも付けられますし、「イイなぁ」と思うからこそ、ここに取り上げているのは大前提なのですが…
音楽的に分析すると
この「あっさり・淡々とした歌がよく売れたなぁ」というのが正直な感想です。
通常、歌を作る際には「構成」を意識します。
いわばメロディーの「骨組み」です。
それを一般的に「Aメロ・Bメロ・サビ…」のように呼んでいるわけです。
そして、それぞれのパーツは「色合いの異なったもの」を用意します。
たとえば…
Aメロは低音で静かに始まって、サビで高音を使い盛り上げる。
Aメロは細かい音符を多用し、サビでは長い音で歌い上げる(またはその逆)。
このような工夫を施すことで、ワンコーラスの中に「メリハリ」が生まれます。
ところが、そうした観点でこの曲を見てみると、ワンコーラス通じて「大きな変化」がないことに気づきます。
イントロは、歌い出しの「ドミソ」の主和音を取るためだけとも思える、和音が並んでいるだけの4小節のみ。
歌に入ってからの音符の長さも、前半・後半通じて4分音符・8分音符がバランス良く配されていて、上記に挙げたような「メリハリ」は感じられない。
「メロディーのある歌」ですから当然「音の上下」はあるわけですが、どの歌でもたいていはっきりそれとわかる「サビらしいサビ」が見当たりません。
強いて言えば、
「どんなに言葉にしても 足りないくらい~」
から高音部の多用が見られますが、ここで盛り上がったと思ったら、
「あなた 愛してくれた すべて 包んでくれた まるで ひだまりでした」
の「歌詞の上では、ここが決めどころだろう!」の部分のメロディーは、再び静かな低音に。
「キレイに収まる」と言えば「収まる」作りですが、ドラマチックな高揚感はありません。
「シンコペーションがほとんどない」のも、この歌の「あっさり感」につながっています。
「シンコペーション」とは音楽用語で、(4拍子の曲であれば)音符を4つの拍からずらし、拍と拍の間に置くこと。
これによってメロディーに「ノリ」が生まれ、リズミカルにカッコ良く聞こえるのです。
ところが、この歌はその手法も使われていません。
リズムに目を向けると、これまた常に4拍子の「1・2・3・4」を意識した8ビートがず~っと刻まれているのみ。
ここにも「変化」はありません。
その「何もなさ」が、せわしない人の心の「癒し」になったのだと思います。
目新しさはないかもしれないけれど、逆に「色褪せない味わい」がある…
「こういう曲の作り方もアリなのだ」と学ばせられる曲でもあります。