【懐かしい歌No.49】「時の流れに~鳥になれ~」五輪真弓(1986)
五輪真弓と言えば…
晩秋の物悲しい雰囲気の中で別れの切なさを歌い上げたバラードナンバー
「恋人よ」
の歌い手…
これが一般的な認識かと思います。
しかしあれから40年。
もしかしたらそれさえも世間の記憶の彼方かもしれません。
「ニューミュージック」という言葉が生まれた1970年代から、時代とともに歌手活動を開始。
デビュー当初からいくつかの「話題作」は提供していました。
また、奥行きの深い歌唱力にも定評がありましたが、デビュー後数年間は「爆発的」と言えるヒットには巡り会えていませんでした。
それが、1980年の「恋人よ」でヒットの頂点へ。
この楽曲で、彼女の名は全国区になりました。
彼女に限りませんが、「大ヒット」を継続するのは非常に難しいことです。
「歌手専業」、すなわち別に作詞・作曲者がいる場合には、セールスが不振だった場合に制作スタッフをチェンジして、違うイメージの曲で勝負する方法をとれる可能性もあります。
しかし、彼女のようなシンガーソングライターの場合、歌を作るのも歌うのも「本人」になりますから、どうしても「作風」が似通って来てしまう宿命にあります。
事実、「恋人よ」の後に
「運命(さだめ)」「リバイバル」
といったシングルをリリースしていますが、いずれも「恋人よ」に通じるスローテンポの短調で曲調が似ており、大ヒット曲を上回る実績を挙げるには至りませんでした。
この「時の流れに~鳥になれ~」は、「恋人よ」から少し時代の下った6年後、1986年に発売された楽曲です。
それまで「暗い歌を深刻な表情で歌う」イメージが強い彼女でしたが、この曲ではタイトル通り、また歌詞の「翼を広げて~」にあるように、
「広い大空を鳥が羽ばたく」
姿をイメージさせるような、明るい曲調でスケールの大きさを感じさせる作品に仕上がっています。
彼女の作る曲のひとつの特徴は「メロディーは複雑だが、コード進行はシンプル」という点です。
五線譜に起こすと、音符が細かく刻まれていて難しいのですが、ハーモニーはそれに比べると「正統派」で比較的簡単なモノが付けられています。
この曲の場合は、サビフレーズが「基本3和音」と呼ばれるコードで統一されています。
ピアノやギターといった「弾き語り」に向いているスタイルとも言えそうです。
映像は、芳村真理が長らくMCを務めた往年の歌番組「夜のヒットスタジオ」での風景です。
CDレコーディングと違って、スタジオの生放送では当然「歌い直し」は利きません。
そうした環境下でも、これだけ堂々と歌い上げられる…
MCの古舘伊知郎に「声帯パワー」と言わしめるにふさわしい貫禄だと思います。
今の歌手にはなかなか見られない「美しいビブラート」も、大きな特徴です。
(歌は1分0秒あたりから)
薄く微笑を浮かべながら歌う表情も、きわめてレアです。
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