【懐かしい歌No.43】「トーキョー・バビロン」由紀さおり(1978)
現在の由紀さおりの一般的なイメージといえば…
実姉の安田祥子とのコンビで童謡を歌う、
あるいはテレビでガックリ来た時や悲しい時にBGMとしてよく流れる
♪ルーールールルルーーの「夜明けのスキャット」の歌い手、ぐらいでしょうか?
メロディーは耳にしていても、その声の主は知られていないのかもしれません…
しかし、1969年に発売されたデビュー曲であるその「夜明けのスキャット」。
1番すべて歌詞がなく、「ルルル」「ラララ」「パパパ」「アアア」だけで構成されている。
きわめてユニークな作りが、大きな波紋を呼びました。
デビュー曲にしてミリオンセラーを記録する大ヒットでした。
発売後40年以上経って、アメリカでリバイバルヒットもしています。
幼い頃から(ソロの)童謡歌手として活動。
その後ポップス歌手に転向してからも
「枯葉の街」「生きがい」「初恋の丘」「手紙」「挽歌」「ルームライト」
など、多くのヒット曲を残しています。
姉と二人で童謡「赤とんぼ」を歌う姿が注目されるようになるのは、それからずっと後になってからです。
童謡歌手デュオとしても、そうなる前のポップス歌手としてのソロでも、「紅白」常連組だった…
異色のキャリアの持ち主です。
また、かつてのお笑いの第一人者「ザ・ドリフターズ」のレギュラー番組(「8時だヨ、全員集合!」や「ドリフ大爆笑」)では、研ナオコ・小柳ルミ子などと並んで、芸人顔負けのコントで笑いをとる名コメディエンヌの顔も持っていました。
特に、志村けん(現在の「バカ殿」シリーズに通じる)とのやりとりは「絶品」でした。
上記に挙げた数々のヒット曲はいずれも好きですし、愛唱歌でもあります。
しかし、その中でも歌っていて最も「歌い甲斐」があると感じるのが、1978年に発売され紅白でも披露されたことのある、この「トーキョー・バビロン」。
「バビロン」とは、古代メソポタミア文明時代に栄えた都市の名前。
それが「東京」と結びついてタイトルになるのが、なんともユニークです。
曲調は、全体的にはハイセンスで大人のムード漂う都会的なポップスに仕上がっていますが、「歌い甲斐」があるとは具体的にどういうことか?
とにかく「音を取るのが難しい」歌なのです。
「歌う歌」というより「器楽曲」のようなメロディー運びです。
歌い出しの歌詞、
「星まで届くガラスのエレベーター」の「ガ」で音が飛ぶところ。
細かい16分音符続きのメロディーの中では、なかなか正確な音程が確保出来ません。
同様の現象は、サビでも。
「『バ』ビロン『バ』ビロン ト『ウキョウ』 あい『が』すみばしょ『を』なくしたまち」
音の上下動がハンパない!
この「飛び方」が、この作品の魅力でもあるのですが。
それをオシャレに難なく歌いこなす彼女は、当時まだ20代でした…
天性の美声が響きます。
ステージでの表情も、余裕たっぷりです。