さえわたる 音楽・エンタメ日記

オリジナル作品紹介、歌の解説、ヴァイオリン演奏、言葉の使い方、エンタメニュース、旅行記などについて綴っています

【懐かしい歌No.3】「君は薔薇より美しい」布施明

お題によらず、私なりの好きな歌を連載しています。

本日はこの歌。

 

1979年、彼が31歳の時の作品です。

(この映像が発売年のものかは定かではありませんが、短縮バージョンながらシングルと同じカラオケ音源のもの、ベストと思われるものを載せました)

「紅白」では21世紀に入ってからも含め計4回歌われ、歌番組に出演の際もよく選ばれているので、耳に覚えのある方も多いかもしれません。

 

デビューは、彼が17歳だった1965年に遡ります。

霧の摩周湖」や「恋」「積木の部屋」などのヒットを経て、1975年小椋佳作詞・作曲による「シクラメンのかほり」がミリオンヒットとなり、レコード大賞を受賞。

 

他の楽曲でもそうですが、この「君は薔薇より美しい」は特に、彼の伸びやかな歌声と豊かな表現力が存分に生かされています。

彼がいとも軽快に歌いこなしているので気づきにくいのですが、五線譜で分析してみると、おおよそ歌として歌えるメロディー運びになっていない。

つまり、音が大きく飛んだり細かい音符が続いたりリズムが細かく刻まれていたり、とにかくやたら「難しい」のです。

 

歌い出しの「息を切らし~」からいきなり高音に飛んで盛り上がり、16ビートに乗って激しく音が高低を繰り返します。

サビは意外にも(この歌の中では)低音部からこれまた複雑なリズムに乗りながら進んでいくのですが、出だしからこの控えめなサビの導入部に至るまでのすべてが、ラストの「変わったぁぁ~」の最高音での結びを際立たせるために構成されている。

最後に来て「そう来たかぁ。ヤラレタ」感の強い、心憎い演出になっています。

作曲のゴダイゴミッキー吉野が、布施明の歌唱力を見込んで挑戦状を送った、とも思えるハイレベルの曲です。

カラオケの愛唱歌のひとつですが、いつも深呼吸して覚悟を決めて歌います。

 

オリジナルキーはAメジャー(音域も当時の男性歌手としてはかなり高音)、最近のライブ歌唱ではキーが「-2」のGメジャーに下がってはいますが、70代を迎えた今も、その美声は健在です。

10年前の2009年、紅白25回の出場をもって「自分の出場枠を後進の『ポップス歌手』に譲りたい」として潔く勇退したのも、印象的でした。

 

ちなみにこの1979年には、知名度は低いですが「305の招待席」「カルチェラタンの雪」という、いずれもこの曲の底抜けの明るさとは正反対の悲しいバラードの名曲が相次いで誕生しています。

 


君は薔薇より美しい