【懐かしい歌No.30】「馬と鹿」米津玄師(2019)
今年、個人的に最も印象に残った曲。
それが米津玄師「馬と鹿」です。
いつもの「懐かしい歌」と違い、ちょっと新し過ぎますが、興奮は今年のうちにということで、駆け込み的に取り上げました。
今年7月から9月にかけてオンエアされた、ラグビーの世界を舞台にしたTBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」のテーマソングとして書かれたこの曲。
そのため、今年大いに盛り上がったラグビーワールドカップを話題にしたシーンでは、テレビ局の垣根を越えてBGMとしてよく流れました。
昨日の話の続きになりますが、今年は何と言ってもOfficial髭男dismの年。
あれだけ売れたのに、レコ大ではノミネートさえされていません。
客観的に考えて、「Pretender」がもし大賞だったら納得できたかもしれません。
一方、「今年はラグビーの年だった…」と考えると、大賞に「馬と鹿」が選ばれていても、決しておかしくはなかったと思います。
(昨日あれだけ言っておいて、やはり今晩が気になっていることがバレてしまいました…)
さて、この曲でまず気づくこと。
歌詞にタイトルフレーズがありません。
詞の世界から、どうやってこのタイトルが生まれたのか?
まずテーマがあって、詞を書いたのか?
それとも詞が出来上がってから、タイトルを付けたのか?
不思議と言えば不思議なタイトルですが、そんな疑問など軽く超越した文句なしの傑作だと思います。
メロディーライン。
冒頭からBメロにかけては、通常のドレミファソラシドに加えて、シャープ・フラット(半音上・半音下)を随所に駆使した、複雑で非常に音の取りにくい構成になっています。
それにつれて、コード進行も複雑に推移していきます。
サビの
「これが 愛じゃなければ 何と呼ぶのか 僕は知らなかった」
の部分では、そうした「混沌」が解放されるように、詞と曲がぴったりマッチして、実にドラマチックに耳に残ります。
サビでも、音階のシャープフラットは多用されています。
鼓動を感じさせるような、速すぎず遅すぎずのテンポもちょうど良い感じ!
バックアレンジ。
冒頭イントロなしでいきなり始まるヴォーカルを、これ以上ないと思われるシンプルな8ビートでフォローし、徐々に盛り上がってサビで一気に楽器を集めて爆発させる展開。
まさに心憎いばかりの演出です。
特に、2番のあとのDメロを経た後、ほんの一瞬の静寂をおいた後サビが再び現れるところは、もう「グッと来る」としか言いようがない!
実はあまり目立たないのですが、出だしからサビにかけて、メインヴォーカルを3度上の音程でひっそりと支えているバックコーラスも、楽曲を生かす絶妙なスパイスになっています。
ロングヒットの「Lemon」も「Flamingo」も良い曲ですが、個人的にはこの歌にかないません。