都内の鉄道網「相互乗り入れ」のメリット・デメリット
東京都内の鉄道網は、JR・各私鉄・地下鉄が入り乱れて、まさに「網の目」状態になっています。
朝夕のラッシュタイムには、どの路線も大変な混雑になります。
毎日何万・何十万の人たちが一斉移動しているわけですから、当然といえば当然です。
朝は、会社や学校の開始時刻が8時台・9時台であることが普通ですから、乗客が一定の時間帯に集中し、車内が混雑するであろうことはある程度理解できます。
しかし帰りは、学校ならば通常夕方のまだ明るい時刻、仕事であればそれぞれに終業時刻がバラつくので、もう少し空いていても良さそうなところです。
しかし深夜になっても、座席に余裕がある風景にお目にかかることはまずありません。
眺めるだけで目がチカチカして来そうな、都内の地下鉄の路線図です。
都内には、東武・西武・京王・小田急・東急・京浜急行・京成など多くの私鉄路線が運行されていますが、これらのルートには「不思議な法則」があります。
いずれも「山手線の内側に入れない」のです。
東武・西武は池袋。
京王・小田急は新宿。
東急は渋谷。
京浜急行は品川。
京成は上野が「起点・終点」になっています。
みんな、山手線駅止まりです。
山手線内の都心に鉄道で入ろうとすれば、すべて地下鉄を利用しなければならない作りになっているのです。
例外は、山手線内を東西に横切るJR中央・総武線だけ。
(ほんの一部、都電荒川線が走っています)
従って、郊外からの乗客の多くは、途中駅で地下鉄に乗り換えなければなりませんでした。
この煩わしさを解消したのが、地下鉄とJRおよび各私鉄との「相互乗り入れ」システムです。
現在の東京メトロ各路線は、古い時代に建設された銀座線・丸ノ内線を除いて、すべてが他社路線と相互乗り入れを実施しています。
これによって、上記の巨大ターミナル駅でわざわざ乗り換えなくても、郊外から都心に直通で通えるようになりました。
前回の記事でも触れましたが、都内の駅での乗り換えは「ひと仕事」。
同じ駅名だからと安心していると、人込みの中を何百メートルも歩かされたり、いくつものエスカレーターを乗り継ぎさせられたりします。
その煩わしさから解放されるのは、大きなメリットです。
一方、こんな不都合も。
「相互乗り入れ」とは、途中乗り換えなくて済むようになること。
つまり、その分「始発駅」がなくなることでもあります。
「始発駅」の魅力とは?
そう、1本電車をやり過ごして待てば「座れる」ことです。
その「確実に座れる」チャンスが、相互乗り入れによって奪われてしまったのです。
面倒な乗り換えをしても、その後の決して短くない移動時間を「始発駅」での少しの待ち時間で座って過ごすか、相互乗り入れの直通電車に乗って、ギューギュー詰めで立ったまま過ごすか…
通勤は毎日往復で必ず起こるイベント。
都心の超混雑の中を、どう移動するか…
ささやかながら、けっこう切実な話でもあります。