「応援お願いします」~スポーツ・歌・政治~言われる場面によって純粋さが消え、おカネのにおいがしてくる言葉
以前の記事で、日常会話で非常によく登場する便利な言い回し「よろしくお願いします」について触れました。
この時は「致します」の漢字使いの方がメインでしたが、この「よろしく」(=状況が「よろしくなるように取り計らいを…」)に似たニュアンスの言葉として、「応援お願いします」があります。
「応援よろしくお願いします」と、間に「よろしく」が入ることも多いです。
この言葉が一番シックリ来る場面は、やはりスポーツにおいて、でしょう。
さらに、アマチュアスポーツの場合。
選手がこの言葉を発するのは、
「試合に勝つように応援して欲しい!」
そんな純粋な気持ちから出てくるものだと思います。
だからこそ、観客はその言葉に応えて客席から、あるいはテレビ画面から、心からの声援を送るのです。
これが「プロ」の世界になると、言葉に接した時の気持ちが若干変わってくる。
一番の目的は、「チケットを買って見に来て欲しい」。
それでも、スポーツであればどんなものにも「勝ち負け」の要素があるので、「勝つように」応援して欲しいとの気持ちに打たれ、という要素はあります。
「応援お願いします」の言葉を聞いて、スポーツより純粋度が落ちるかも?と感じたのが、歌手の場合。
新曲が発売されるタイミングで、「応援よろしくお願いします」が多用されます。
歌番組におけるナマの発言もありますし、それ以上にラジオのスポットCMで流れるのをよく聴きます。
感覚的に、演歌歌手に多いような…
「勝ち負け」ではないのに「応援する」…
ここで言う「応援」とは、つまり「CDを買って欲しい」を意味します。
歌手もプロなので当然と言えば当然ですが、直接「CDを買って!」ではなく「応援して!」という言葉を持ってくるところに、日本人らしい婉曲表現、奥ゆかしさ(?)を感じます。
興味深いのは、同じ歌手でも、
コンサート(ライヴ)には「ぜひ(遊びに)来て下さい!」
とダイレクトな表現を使っていること。
俳優が映画公開に合わせて「ぜひ劇場でごらん下さい!」と連呼するのと同じです。
CDを買うのと一緒で、どちらも「おカネを払っている」ことには変わりないのに…
政治家も、ある一定期間のみ「応援お願いします」(あるいは「声援」)を連発します。
ただし、それが熱心に聞かれるのは選挙戦の一定期間だけ。
CDを買えば、あるいはライヴに出かければ、応援した(=おカネを払った)だけの満足感をすぐに直接実感することが出来ます。
しかし、こと政治に対してはおカネ(血税)を払った対価がなかなか実感できない気がする。
何とも歯がゆいところではあります。