スタジオレコーディング時は、リハーサルのつもりの「テイク1」が採用になることが多い
ふだんの作曲活動では、今月初めにご紹介したように、自室のパソコンを使って「音づくり」をしています。
しかし、きちんとした形でCDをリリースするなど、何かのイベントあるいは節目で、音楽スタジオでのより本格的なレコーディングを行うこともあります。
レコーディングスタジオは通常「暗室」のような作りです。
マイクに向かって立つと、真正面がガラス張りになっている。
その向こう側の部屋には、作業全体を取り仕切るディレクター。
音響機器関係を取り扱うミキサー。
時に、「立ち会い人」として作詞パートナーたち。
トータル数名が待機する。
そんなスタイルです。
自宅でひとりで行うレコーディングとは、まったく環境が違います。
隣の別室にいるとは言え、「人前」で歌うことに変わりはありません。
何百人・何千人を前にしてのステージパフォーマンスも、場数をたくさんこなしているはずなのに、レコーディングにはそれらとはまったく違う種類の緊張が走ります。
ましてやステージでの歌唱と違って、そこでのパフォーマンスの結果が
「永遠の音源」
として残るわけですから、こと音楽に関しては肝の据わっているつもりの私でもやはり平常心を保つのに苦労します。
マイクの真正面に立つと、ガラス張りの向こう側に居並ぶ彼らと直接目が合ってしまうので、マイクの角度を90度傾けて「横向きで」歌うことが多いです。
そして、いよいよレコーディングに突入。
時間中の進行一切を担当するディレクターの指示が飛びます。
「じゃぁ、まずはリハーサルで軽く流して歌ってみましょうか!」
自分で作った曲なので、マイペースでフルコーラス歌ってみます。
これが「テイク1」になります。
「ハイ、OK!じゃぁ本番行きますね。途中で間違えても『つなぎ』(一部分をカットして編集すること)でイケるから、リラックスして!」と。
こちらとしてはリハーサルに続き、2度目の歌入れになります。
それもひと通り終了すると、
「2番のここのところ、ちょっとこうしてみましょうか?」
「リフレイン入りは、もう少しこんな風に」
等、詳細なコメントがあれこれ入って、同じ所を小節を区切って何度か歌い直します。
「他人から指示を受けて歌う」のは、非常に新鮮な感覚。
演奏時間にしてたかが3分4分の1曲を歌うのに、何時間もかかります。
自宅でのレコーディングでもそうですが、1曲仕上げるまでに求められる集中力はハンパない!
飲み会後にカラオケで歌うのとはワケが違います。
ましてやスタジオでとなると、ほんの30分もしないうちに、体力的よりまず精神的に集中力が途切れてくるのが自分でもわかります。
いろいろやり直して、さまざまなテイク(バージョン)のヴォーカルが出来上がるのですが、不思議なことに、
最終的に採用になるのは、当初「リハーサルで」と言われて歌ったテイク1だったりすることが多いのです。
リハーサルと言われると、心の中で
「これは本番じゃないから、好きなように歌おう」
という気楽さが芽生え、結局はベストな歌声を呼び込んでいるのかもしれません。
技術的に「つなぎ」が出来ると言っても、流れとして途切れていないヴォーカルの方が絶対聴きやすいに決まっています。
どの現場においても、「じゃぁ本番…」のひと言は、多かれ少なかれプレッシャーを招きますね。
そんな苦労の末出来上がった、CDの数々です。
(右側にあるジャケットは、他の女性歌手に提供した楽曲です)