旅先の無人駅で見つけた訪問者ノート~心に残る「手書きのメッセージ」
ケータイ・スマホが普及する前、人との待ち合わせはけっこうスリリングなものでした。
何か急なスケジュール変更があった際、相手とどうやって連絡を取り合うかは、けっこうな一大事でした。
そんな緊急事態のために、主要な各駅にはほとんど「伝言板」なる黒板が存在していました。
駅で待ち合わせする人が、相手に対して「先に〇〇に行って待ってる。△△(自分の名前)」など1行メッセージを残すものでした。
通りすがりに、見るでもなくなんとなく目にする手書きのメッセージの中に、小さなドラマが垣間見えたりしたものでした。
同じ駅でも、廃線間近のローカル線を「鉄道ひとり旅」していた時のこと。
現在も七尾~穴水間で営業しているのですが、その路線は大幅に短縮。
かつては半島の突端・蛸島駅へ行く路線と、朝市で有名な輪島方面に分かれる路線がありましたが、2005年に廃線となってしまいました。
「終点」だった蛸島駅です。
ここから10分ほど歩くと、人っ子ひとりいない日本海の砂浜に出ます。
まさに「誰もいない海」、それはそれは素晴らしい絶景です。
途中の無人駅で降りると、駅舎の片隅に古ぼけた大学ノートがあるのを見つけました。
表紙には「駅訪問ノート」の文字が。
ここを訪れた人が、それぞれの思いを自由に書き残すためのノートでした。
私と同じように、この路線が廃線になるのを知って、その前に記念に乗りに来たと綴られた鉄道ファンのメッセージ。
恋人と別れた傷心旅行で、見知らぬ遠い場所を訪ねたついでに途中下車したと書かれたメッセージ。
沿線には「恋路駅」というシャレた名前の駅もありましたから、もしかしたらそこに足を運んだのかもしれません。
あるいは、何年かぶりに故郷に戻り、これから肉親に会うとしたためられたメッセージも。
誰かに読まれることを意識したわけでもないし、今後二度とこの地を訪れることはないかもしれない。
それでも、自分の心の記念にと、大学ノートに様々な思いのこもったメッセージが多数残されている…。
画像を載せて1行コメントを添えるだけのSNSの書き込みとはまたひと味異なる、心に残る「アナログの温もり」をふと感じたひとときでした。
もちろん私も、ここにやって来たことの証を残すべく、つれづれなるままにメッセージを残してきました。