【懐かしい歌No.8】「愛撫」中森明菜
シングルとしての発売は1994年。
この動画は1995年4月5日とありますから、彼女が29歳の時ということになります。
番組は、今はなつかし「夜のヒットスタジオ」のようです。
(TVのためフルコーラスでないのが、実に残念…)
タイトルにあるように、小室哲哉が彼女に書き下ろした楽曲です。
この翌年あたりから、いわゆる「小室ファミリー」が音楽界を席巻していくことになるのですが、そうして彼のサウンドを「聴き飽きるほど聴くことになる」ブームの直前にリリースされたのが、この「愛撫」でした。
シンガーとしての中森明菜が一番輝いていたのは、デビューの1982年からシングル最後の1位獲得曲となった「水に挿した花」が発売された1990年頃までの実質8年間ほど。
その時代のヒット曲は「出せば必ずトップ1」として、好き嫌いは別として知らない者はいなかった…
客観的な実績を持ち出すまでもなく、松田聖子とともに、ほかのアイドルとは「別格」の存在でした。
しかしそれから四半世紀以上が経った今、見たい聴きたいはまた別として「自分で歌いたい曲No.1」は、そんな8年間の大ヒット曲のどれでもなく、「愛撫」なのです。
全盛時の彼女のヒット曲にはかかわって来なかった大作詞家、松本隆の魅力的な詞の功績ももちろん大きいですが、音楽に携わる身としてはやはり楽曲の構成に心を奪われます。
複雑な16ビートは後の小室作品にも共通するものがあるのですが、年齢を重ねた彼女の表現力と妖艶な歌詞とも相まって、独特な世界観を演出しているように感じます。
メロディー上のいちばんの特徴は、ワンコーラスの中で「転調」し、しかもそれを2回もしている点。
通常転調には「キーを移しやすい一定のルール」があるのですが、この作品では音楽的にそれを裏切る「パターン破りの移り方」で、さらに2回転調しているのです。
そして、リフレインでは半音キーがアップ。
つまり、1曲で4つのキーがあることになるのです。
これはきわめて珍しいパターンです。
特に小室メロディーのファンではありませんが、この歌はよく出来ていると思います。
明菜もそれを難なく歌いこなしています。
歌唱中ずっとクールに演じていた彼女が、ラストで緊張がほぐれてか不意に微笑みを漏らす場面が、なんとも印象的です…