「結果がすべて。プロセスは評価されない」だけではモチベーションがダウンし、チーム全体のパフォーマンスが落ちていく~企業組織の人事考課システム
勤務先では毎年2回、上期・下期(4月と10月)に
「人事考課」と呼ばれる業績評価システムがあります。
これまでに複数の企業を経験しましたが、そのベースはみな同じでした。
会社であれば、どこでも似たようなしくみがあるのだと思います。
期初に、今期の目標を何項目か立てる。
そして、期が終わった後に上司と個人面談を行い、どれだけその目標が達成できたかを判定する。
上司はそれぞれの目標の達成度を「計数化」し、その期の「点数」をつける。
学校だけでなく、
会社に入っても毎年「通信簿」を受け取る。
これが基本的なメカニズムです。
この点数によって、夏・冬のボーナスの額が決まってきますし、何年間かの「通信簿」の成績はその後の昇進にもかかわってくるため、当事者にとってはまさに「死活問題」となります。
多くの場合評価は点数化されるため、立てる目標自体も客観的に数値化できるものの方が望ましいです。
営業職であれば、いわゆる「ノルマ」があるのが通常なので、目標設定はかなりクリアです。
「売り上げを〇〇パーセントアップする」
「新規訪問件数を〇〇軒増やす」
など。
一方、
ノルマ的な数値目標を持たない職種の場合、具体的に達成度を測れる目標設定自体が難しいことがよくあります。
「事務作業を効率化する」だけでは、その達成度が客観的に評価できません。
「資料枚数を〇〇枚削減する」では、仕事自体の目的を理解できていない目標設定になってしまいます。
若手社員であれば「通信教育の自己啓発プログラムを期限内に完遂する」といった目標を設定させることもあります。
しかし、そもそも自己啓発は業務のレベルアップの「手段」ですし、プログラムをやり遂げるのは当たり前。
それ自体を目標にすることは、本来的には疑問が残ります。
そうこうして、期末に目標の達成度を評価するわけですが、そこで反映されるのは、当然ながら「結果」のみです。
1日何時間も汗水流し、靴底をすり減らして外回りをしても、新規のお客などそう簡単に獲得できるわけではない。
ましてや飽和状態のマーケットの中で、売り上げを伸ばすなど容易なことではない。
しかし、そうした「プロセス」は人事考課では評価されない。
途中どんなに努力をしても、当初の数値目標を実現できなければ、最終的な評価には結びつかない厳しい現実があります。
言うまでもなく、会社の存立意義は「営利追求」。
「もうけてナンボ」の世界。
それが「組織の掟」です。
おカネにならなければ、どんなに時間や手間をかけて頑張っても、ムダな仕事と判断されるのは、ある意味当たり前です。
しかし一方で社員としては、「結果には必ずしも結びつかなくても、あれだけ頑張ったのに!」という報われない空しさに、心が折れていくのも事実です。
それでも、会社という組織であれば、まったく救いがないわけではありません。
部署という「チーム」の中で、リーダーたる評価者は、チーム員の「評価には直結しない陰の努力」を目にしています。
そうした努力を「総合評価」にプラスアルファすることも可能です。
評価に使われる「人事考課シート」のフォーマットには「上司所見」欄があります。
そして、そうした「見えない頑張り」を点数に換算してプラスするしくみが整備されています。
評価者の実感としても、チーム員のモチベーション維持のために、多少なりともそうした「遊び・ゆとり」の要素は制度設計上必要だと感じます。
評価される側の社員も、「プロセス」が部分的にでも認められると、心情的に救われる面が少なからずあります。
こうした対応によって、チーム全体のモチベーションアップ⇒パフォーマンスの上昇を見込むことが出来ます。
これがフリーランス・自営業であれば、そんな甘いことは言っていられないことでしょう。
厄介な組織の論理に縛られることなく、すべて自分の裁量で物事を決め、得られた成果はすべて自分のものに出来る。
「自由度」は高いです。
一方で、そうして認められるためには、まさに「結果」がすべて。
どんなに途中で頑張っても、それだけでは何の意味もありません。
「プロセス」は、評価されないのです。
フリーランスの入口をちょっとだけ覗いてみて、その魅力と現実の厳しさを体感した者の率直な思いです。