肩ひじ張らない親しみある敬語~関西弁の「〇〇してはる」。東海圏にも特有の表現が
敬語表現の奥深さ。
日本語の特徴でもあり、難しいところでもあります。
面倒くさい面は確かにありますが、そこをきちんと使いこなせることが素晴らしいとも思っています。
マナー講座や教科書的に紹介される敬語は、標準語をベースとしたものです。
たとえば、「〇〇している」を敬語表現する際には、「〇〇される」あるいは「〇〇していらっしゃる」とするのが正しい、と教えられています。
そんな敬語表現ですが…
言葉そのものに「おくにことば」があるように、敬語表現にも地方によって独特な言い回しがあります。
代表的なのが、
関西弁の「〇〇してはる」(〇〇したはる)
という言い方。
おエライ方の所作を敬語表現する時。
たとえば社長が何かを発言している時、
標準語ベースだと「社長が〇〇とおっしゃる」
になります。
文章的には間違いではないのですが、特に会話の場合、話の流れの中でそこの部分だけ異様にかしこまり過ぎて不自然に響くことが時々あります。
社長といえども、同じ社内の人間。
話したこともある間柄であればまだしも、本人のいないところでそこだけ敬語を使うのもヘンだなぁと感じてしまいます。
そんな時、関西では
「シャッチョウさんが〇〇って言うてはるわ」
的にしゃべるのです。
文字だけでニュアンスをうまく伝えるのが難しいのですが…
「シャチョウ」のアタマの部分にアクセントを置く。
間に小さい「ツ」が入って「シャッチョウさん」的に響く。
一種ユニークなイントネーションとも合わせて、
ただ「言う」とぶっきらぼうにでもなく、
「おっしゃる」と言うほど堅苦しくもない、
それでいて、ちゃんと敬う気持ちのこもった親しげな響きになるのです。
初めて転勤で関西に住んだ際のこと。
自分では関西弁はしゃべれないのですが、そうした言葉のやりとりを聞いていて、その「適度な親近感と敬愛感」のバランスが絶妙でイイなと思ったものでした。
ちなみに、東海圏(愛知県・岐阜県近辺)にも、ユニークな敬語表現があります。
その特徴は、「〇〇している」を「〇〇して『みえる』」と表現すること。
生粋の名古屋弁と言えば、「エビフリャ~はごちそうダガヤ!」と揶揄されるほどイントネーションが特徴的なおくにことばのひとつです。
ただし、関西人が「全国各地どこへ行っても、何があっても関西弁」なのに対し、名古屋の人たちは標準語的イントネーションへの柔軟性が高く、一見出身地が判別できません。
でも、何かの拍子にこの「~してみえる」が出ると、「あぁ、名古屋出身ですね!」であることがすぐわかります。
ほかの地方でも、特有な敬語表現があるのかもしれませんね。