「作曲接待」のほろ苦い思い出~全都道府県旅行記・栃木県その2
栃木県で有名な温泉と聞かれてまず真っ先に思い浮かぶのが、鬼怒川温泉です。
同じく県内だけでなく全国的にも有数の観光地、日光にもほど近く、日光を観光して宿泊は鬼怒川で、といったコースも定番です。
私もそのコースに沿って、日光・鬼怒川を歩いたことがあります。
ただ、その内容は「仕事の出張ではないけれど、プライベートとも言えない」なんともほろ苦いものでした。
1か月ほど前の記事で、歌作りが自分の「人生のお供」になっていること、その「歌」を世に出すためにはギョーカイにコネを持たなければならない、すなわち制作現場を取り仕切るディレクターにアプローチしなければならないことに触れましたが、この旅はその夢に近づくための「ディレクター接待旅行」だったのです。
当時、一般からオリジナル作品を募る音楽月刊雑誌が発行されており、私は毎回応募を続けて、まぁまぁの「常連入賞者」になっていました。
その審査員のひとりだった作曲家に声をかけられ、彼を講師として、同じように作曲家を志す仲間たちが招集されて、自作を世に出すための「自主勉強会」を毎月行っていました。
その場には、講師であるその作曲家の伝手で、何回かに1回現場のディレクターがゲストに呼ばれ、そこから彼らとの人脈も細々ながら徐々に築かれていっていました。
そんな中、講師から「ディレクターを接待して、絆をより深いものにしていこう」との提案がありました。
自分の歌を世に認めて欲しい。
そのためにはディレクターに評価されたい。
でも、接待となると(仲間内でシェアするとしても)出費がかなり痛い。
しかし、ギョーカイとの橋渡し役でもある講師の発案である以上、断ることも出来ない。
こうして決まったのが「鬼怒川温泉1泊接待旅行」でした。
受講生数名で、東京から近場とは言え、ディレクターと講師の旅行費用をすべて負担する…
もちろん、せっかく皆が集まる大切な機会ですから、昼間は旅館の一室を借りて作品の発表・講評会を行う時間もあるにはあったのですが、ディレクターはそうした接待には慣れっこになっているのか、お目当てが夜にあるのは明らかでした。
宴会では我が物顔で飲み放題・騒ぎ放題。
二次会では近所のスナックに移動。
さらに、翌日の朝食でビールを注文したのには、さすがにビックリでした。
そうした「先行投資」にもかかわらず、結局私を含めた受講生たちの作品が現場に取り入れられることはありませんでした。
私にとって「鬼怒川」は、今でもちょっとしたトラウマに陥る地名です。
ネガティブな旅行記でごめんなさい。