「漢字+ひらがな」の不自然?な熟語例。なぜ「障害」ではなく、あえて「障がい」と書くのか?
ニュースには、音声によるアナウンスをサポートする意味で「字幕スーパー」が併用されるのが一般的です。
たいていは読まれる原稿に沿った形で、または内容を要約して表示されるのですが、そこで気づいたこと。
通常「漢字」で書かれる熟語の片方が、あえて「ひらがな」になっている。
そんなケースがあります。
ふた昔前まで比較的多く見られたのが
「ら致」「だ捕」「覚せい剤」などです。
漢字があるのに、なぜ片方をひらがな表記にして、「漢字とひらがな同居スタイル」にしているのか?。
見た目だけで、ちょっと不自然な印象を感じました。
現在は、いずれも「拉致」「拿捕」「覚醒剤」のように漢字表記される方が多数派になっています。
辞書によると、「拉」「醒」は、現在はいずれも「常用漢字」。
以前はその指定がなく、公共の場で使うことは良しとされていなかったため、漢字表記されることがなかったようです。
一方、「拿」には常用漢字指定がありません。
「拿捕」という言葉自体、「拉致」や「覚醒剤」に比べるとニュースに登場する機会が圧倒的に少ない。
そのため、この熟語自体を目にする・あるいは口にすることはほとんどありませんが、もしも関連したニュースがあった場合には、字幕スーパーにどう表示されるかちょっと注目してみたいと思っています。
(そんなニュースは起こらない方が良いに越したことはないのですが)
そんな中、今度は逆の現象も。
これまでは普通に漢字熟語表記されていたのが、「漢字+ひらがな」に変更され始めて来ている言葉があります。
それは、「障害」から「障がい」への書き換えの風潮です。
これまで普通に漢字熟語として使われていた「障害」の後半が「ひらがな」表記され始めています。
あるいは、ふだんあまり見慣れない「障碍」という漢字に。
「碍」は常用漢字ではないため、ひらがなで「障がい」と書かれることもあります。
これはひとえに、漢字の持つ意味、およびそれがもたらすイメージから来ていると思われます。
「害」には、
「そこなう・傷つける・こわす」のほかに、「わざわい」「災難」などの意味があります。
いずれも、ネガティブなイメージを抱かせる漢字です。
これに対し「碍」には…
「さまたげる・じゃまをする」という意味もありますが、もう一つ、
「ささえる・支えになる」という悪くない意味も持っています。
心身に支障を抱える方々に対して、「災い」の意味を持つ「害」の漢字を使って「障害者」と呼ぶのは、社会通念上ふさわしいとは言えない。
かと言って、「碍」は常用漢字外で一般的にはあまり馴染みがない漢字。
そこで、「障がい」とひらがなにする。
ちなみに、この使い分けは「障がい者」「内部障がい」のように、人間の身体に対してのみの用法のようです。
「電波障害」「交通障害」「障害競走」などには、「害」の字がそのまま充てられています。
また、人間に関するものであっても、「意識障害」「胃腸障害」などは「碍」ではなく「害」のままです。