【懐かしい歌No.85 元祖グループアイドルのソロデビューヒット】「さらば恋人」堺正章(1971)
現在も司会者・タレントとして、幅広い活躍を続けている
堺正章。
喜劇俳優を父に持つ「2世タレント」の走り的存在でもあります。
現在でこそ「司会者」のイメージが強い彼。
その昔「マチャアキ」の愛称で親しまれ、森光子主演の国民的ドラマだった「時間ですよ」に、樹木希林(当時:悠木千帆)や天地真理・浅田美代子らと共に出演した名俳優であったこと。
それ以前に、今のジャニーズタレントなど足元にも及ばぬほどの爆発的人気を誇った「歌手」であったこと。
そんな「実績」の数々は、もはやご存知ない方々のほうが多いのかもしれません。
今を去ること半世紀以上前。
1960年代半ば、ニッポンに
「グループサウンズ」
と呼ばれるブームが巻き起こりました。
中でも人気を誇ったのが…
ジュリーこと沢田研二(時に加橋かつみ)がリードヴォーカルを務めていた「ザ・タイガース」。
歌詞が替え歌になるほど国民的なヒットとなった「ブルー・シャトウ」の「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」。
「失神騒動」で有名だった「ジ・オックス」などのグループもありました。
スパイダースには、井上順や「ムッシュかまやつ」ことかまやつひろしも所属していました。
今のジャニーズタレント並みに「ルックス」だけを問うなら(もちろん個人の好みはあるにせよ)、若い頃の沢田研二の「美しさ」は群を抜いていたような気がします。
しかし、上記のメンバーの中で「現役」の2文字を追求するならば、マチャアキが圧倒的な「勝ち組」と言えるのではないかと思います。
あれこれ語り出すと、プロフィールの紹介だけで記事が終わってしまいそうです…
ブームが過ぎ去り、それぞれが単独の活動を始める中で、彼はグループ時代のメインヴォーカルのキャリアを受け、ソロ歌手として新たなスタートを切ります。
その「再デビュー曲」が、この
「さらば恋人」
です。
タイトル通り、基本的には「別れの悲しい歌」です。
ただ、決してジメジメとはしていない。
作詞は、医者の肩書を持ちながら人気フォークグループ、「ザ・フォーク・クルセダーズ」を結成し、
「オラは死んじまっただぁ~!」の歌詞と独特な歌声が衝撃的だった
「帰って来た酔っ払い」
をヒットさせたほか、
「あの素晴しい愛をもう一度」
「白い色は恋人の色」
その淡々とした語り口が、AメロとBメロだけのシンプルで覚えやすいメロディーとともに、胸に迫ってきます。
これぞ「伝統的なはやり歌のお手本」のようなメロディーの構成。
これだけの音符使いで、「聴かせる」メロディーが作れる…
後々のアイドルブームに大きく貢献することになる巨匠作曲家:筒美京平の「天才」ぶりが、すでにこの時代から如何なく発揮されています。
イントロから鳴り響くティンパニの音が、バックサウンドのスパイスになっています。
<Aメロ>
さよならと 書いた手紙
テーブルの 上に置いたよ
あなたの 眠る顔見て
黙って 外へ飛び出した
<Bメロ>
いつも 幸せ過ぎたのに
気づかない 二人だった
<A'メロ>
冷たい 風に吹かれて
夜明けの 街をひとり行く
悪いのは 僕の方さ
君じゃない
名作を得た「マチャアキ」は、スパイダース時代に培った表現力を生かし、味わいのあるヴォーカルを聴かせています。
「さよならと かいたてがみ~」
「いつも しあわせすぎたのに~」
の歌唱で明らかなように、現代の若手歌手(歌手に限らない?)の多くが発音出来なくなってしまった「がぎぐげご」の鼻濁音も、キレイに表現されています。