「2位じゃダメなんですか?」「ダメなんです!」作曲家協会オリジナルソングコンテストの顛末
もう10年以上前、民主党政権の時代に「事業仕分け」なる言葉が流行りました。
スパコン導入議論の中で、某レンホウ議員の
「2位じゃダメなんですか?」
が取り沙汰されました。
もちろん、その話を持ち出すわけではありません。
自分に直接関係した話です。
私は2002年から「公益社団法人 日本作曲家協会」の会員として活動しています。
そこでは、「理事会」や会員が一堂に会しての「年次総会」や「勉強会」という名の宿泊旅行など、さまざまな活動が行われています。
一番世の中に知られた活動としては、毎年末に放送される「日本レコード大賞」の主催組織である、ということでしょうか。
そんな中、個人的に一番興味深く取り組んでいるのが、会員向けの募集企画として毎年行われている
「オリジナルソングコンテスト」です。
紅白への出場経験もあるような、ある程度知名度の高い歌手が毎年選定されます。
その歌手の「新曲」を、会員から提出された作品から採用するという、いわば「オーディション」です。
この企画に、いち会員として毎年応募しています。
忘れもしない、2013年のこと。
その年の想定歌手は、演歌歌手・大月みやこでした。
平成の初めの頃、J-POPの躍進、演歌のあまりの衰退ぶりに、「レコード大賞」が「ポップス部門」と「演歌・歌謡曲部門」に分けられた時期が数年間ありました。
そうでもしないと「演歌からは大賞が選出されない」と、制作サイドに危機感があったのです。
そんな中、1992年に「白い海峡」で「演歌・歌謡曲」部門の大賞を獲得した、演歌のジャンルでは「大物」の部類に入る歌手です。
このコンテストで最優秀賞をとれば、彼女の新曲シングルに採用される…
歌作りを手がける者にとっては、夢のような企画です。
と言っても、自由に歌が作れるわけではありません。
まず、会員たちに「課題詞」が提示されるのです。
これは、事前に「日本作詞家協会」のコンテストで最優秀賞を獲得した作品です。
この詞に曲を付けるオーディション、という形をとります。
タイトルは「ひとり越前~明日への旅」。
う~ん、タイトルからして「真正面からド演歌」です。
ふだん自由に作曲する時のアタマの中は、完全にポップス。
演歌を作曲する習慣はありません。
それだけで、ハードルが一気に上昇します。
でも、この詞にチャレンジするしかありません。
過去記事でも触れていますが、これまで「一般公募」ではグランプリを獲得したことがありました。
この時、ほかにどんな立場の人たちが応募したのかはわかりません。
しかし、作曲家協会主催のこのコンテストの応募者は、全員が「会員」資格を持っている人たちばかり。
プロの作曲家との競争で、勝ち残っていかねばなりません。
募集締め切りから1か月後。
事務局から1本のTELが入りました。
「さえわたるさん、おめでとうございます!優秀賞に選ばれました!」
一瞬だけ、舞い上がりました。
しかしほんの数秒後、それが「ぬか喜び」だったことに気づきました。
そう。
「優秀賞」であって、「最優秀賞」ではなかった!
「1位」ではなく、「2位」だったのです。
「金メダル」の作品が、その年に彼女の新曲として華々しく発売されました。
それほどヒットはしませんでしたが、歌手がポップスであれ演歌であれ、「シングルA面」の作曲者という肩書は、当事者にとってはとてつもなく大きい実績です。
そして、2位だった私には「表彰状」が贈られてきました。
協会の会報に、名前が載りました。
確かに、名誉あることではあります。
しかし、言い方は悪いですが「紙きれ1枚」が結果のすべてでした。
1位と2位には、文字通り「天と地」の差がありました。
「2位じゃダメなんです!」。
それを、イタイほどかみしめた瞬間でした。
でも、今年も来年もまた次の年も、チャレンジは続きます…