【懐かしい歌No.84 衝撃のイントロから始まる海外への旅情】「異邦人~シルクロードのテーマ」久保田早紀(1979)
今になって振り返ると、歌謡界「激動の80年代」の幕開けを告げた「衝撃の1曲」だったと思います。
発売は1979年10月ですが、人気に火がついたのはその年末辺りから。
年をまたいで1980年に入るまで、1位の座をキープしました。
三洋電機テレビのCMソングとして流れていた曲に、それまでのはやり歌では耳にしたことのないようなテイストを感じ取りました。
歌手名:久保田早紀。
まったく聞いたことのない名前でした。
それもそのはず、これが彼女のデビュー曲だったのです。
この曲の原題は「白い朝」でした。
デビュー曲の候補として、後にこのシングル盤のB面に収録された「夢飛行」と、次のシングルとなった「25時」の3曲が挙がった中、スポンサーの意向で「白い朝」に決定。
そして同時に、プロデューサーの判断で、タイトルが「異邦人」に変更されたのです。
タイトルが「白い朝」のままだったら、これほどまでに話題を呼ばなかったかもしれません。
この曲の「衝撃」の最大のポイントは、イントロのメロディーです。
サブタイトルに
「~シルクロードのテーマ」
と付けられているように、ヴォーカル部分のメロディーラインも中近東風で神秘的なムードを漂わせています。
しかし、何と言っても冒頭のイントロ4小節が、この曲の「運命」を決めたと言っても良いくらい…
この動画ではスタジオのため電子楽器で奏でられていますが、シングル盤ではストリングスで、一層迫力ある音色になっています。
この部分で、一気にはるかオリエンタルな世界に連れていかれた気分になります。
それまでのニッポンのはやり歌には考えられない音符の動きに、度肝を抜かれたものでした。
(曲自体は彼女本人の作詞・作曲によるものですが、このイントロのメロディーは編曲を担当した萩田光雄によるものだと知ったのは、後になってからのことです)
ワンコーラスの構成は、A-A'-B-A''の比較的シンプルなものです。
ただ、繰り返されながらメロディーの詳細が微妙に異なるAメロ自体と、それをバックで支える
「♬ズンタタ、ズッタ、ズンタタ、ズッタ~」
のリズム。
「ラクダに乗って旅をするような」独特なトーンが、タイトル通りのオリエンタルなイメージを強く押し出したものになっていて、強いインパクトを残します。
そのムードを後押しするのが、中間部のBメロです。
「♬空と大地が 触れ合う彼方」の部分で、それまでの「ヘ短調」が8小節だけ「ヘ長調」にチェンジします。
ここでは、それまでのAメロで「砂漠をラクダで旅」気分が一転。
歌詞通り、広大な大地が目の前に開けるような、スケール感あるアレンジに変わります。
その後10作のシングルを残して、芸能活動から引退。
しかし、結婚後本名の「久米小百合」名義で、教会音楽家としての活動を続けています。
楽曲「異邦人」も、発売後四半世紀経った2003年、再び三洋電機のCMソングとして起用されています。
さらに、多くのミュージシャンによってカバーされる、息の長い歌となっています。