【懐かしい歌No.50】「このまま君だけを奪い去りたい」DEEN(1993)
1990年代前半に一大ブームを巻き起こした「ビーイング系」バンドのひとつ。
デビュー曲であるこの「このまま君だけを奪い去りたい」がいきなりのミリオンヒットとなりました。
続く「翼を広げて」もヒット。
翌年リリースされ、それまでとは曲調の異なるアップテンポなナンバー「瞳そらさないで」で、またもミリオンヒットを実現しています。
デビュー当時は歌番組にはほとんど出演しておらず、ヴォーカル・池森秀一の顔はだいぶ経ってから知ることとなりました。
一度聴いたら耳に残る、特徴的な歌声と歌唱法。
以前書いた記事の条件には必ずしも当てはまっていませんが、すーっと聴き入ってしまう、心の奥に響く魅力的な良い声です。
プロならば当たり前かもしれませんが、音程の正確さが完璧!
完璧というより、楽譜にきわめて忠実に「正しく」歌われているところが素晴らしいです。
バラードナンバーには、典型的に見られるアレンジ上の「鉄則に近い」技法があります。
普通、J-POPの楽曲は1番・2番プラスサビの「ツーハーフ」と呼ばれる構成が一般的です。
曲の冒頭、つまり1番の最初の部分は、スローテンポに乗せてヴォーカルをじっくり聴かせるために、バックはピアノのみ・あるいはギターのみ、といった風に楽器を抑えめにします。
そしてだんだん楽器を増やしていき、サビで最高潮の盛り上がりを呼び込んで、ハーモニーをピークに持ってくる…
2番のアタマは、メロディーは当然1番と一緒なのですが、1番のサビでいったん「盛り上がり」を迎えているので、その余韻を守るべく、バックも1番よりは若干多い楽器を配している。
つまり1番と2番では、歌っているメロディーは一緒なのですが、バックのアレンジが変わっているのです。
この曲もその「原則」に従い、1番のバックは控えめで始まり、サビに向けて巧みな盛り上がりを演出しています。
作詞は、WANDSのメインヴォーカルとして一時代を築いた上杉昇。
作曲は、TUBEやZARD、WANDSなどのヒット作を多数手がけ、あの国民的ヒット「おどるポンポコリン」の作曲者でもある織田哲郎。
J-POPの作曲家として、筒美京平・小室哲哉に次ぐセールスを誇り、自らもシンガーとして「いつまでも変わらぬ愛を」でヒットを飛ばした人気者でもあります。
長いタイトルも、ストレートな思いを表現しており、ユニークで良いです。
今聴いても色あせない、バラードの名曲のひとつだと思います。