また発覚した芸能人の薬物依存。お決まりの「初犯なら執行猶予」は適切な判決なのか?
つい先週、「事件を起こした芸能人の復帰劇」についての記事を書いたばかりでした。
ここで3つ取り上げた犯罪をあえてランク付けした時、個人的な結論は以下の通りでした。
- 「芸人の闇営業」は、相対的に軽い。
- 「不適切な行為」は、中ぐらい。
- 「薬物依存」の罪は、重い。
もし自分が強い力を持つインフルエンサーだったら、ここらで「甘い空気」を一喝したい…
そんな苛立ちも若干持ちながら執筆した記事でした。
そんな中、また芸能人の薬物問題。
あの槇原敬之に、1999年に続く2度目の薬物所持が発覚しました。
覚醒剤だけでなく、久しくその名前を聞くことのなかった「危険ドラッグ」の所持も、容疑に含まれていました。
現時点では、まだ「疑惑」とされているようですが、
「火のない所に煙は立たぬ」の言葉通り、おそらく事実なのでしょう。
世間の報道が深刻なコロナウイルス一色になっている中、それでもワイドショーではコロナウイルス関連ニュースのおよそ半分の時間をこの事件に充てています。
肺炎で一般市民の命が脅かされる大変なご時世にあっても、これだけ報じられるということは、とりもなおさず彼の存在感がいまだに相当大きいことを如実に示していると言えます。
純粋なニュース報道では、事件発生のみを伝えていますが、主に芸能ニュースをネタにしたワイドショーでは、先週末の段階で早くもそれをネタにしてのさまざまなトークが展開されています。
本日日曜日は、そうした類のニュースバラエティー番組が目白押し。
きっと今日も、これから各局の番組でこの問題が取り上げられ、さまざまなゲストタレントが「テキトー」な持論(?)を述べることでしょう。
法律の専門家ではないのでよくわかりませんが、薬物事件に関しては、
「初犯の場合は、懲役1年半、執行猶予3年程度」
が定番になりつつあります。
有罪と言われながらも、「執行猶予」がつけば、その間「おとなしく反省している」ことを前提に、ほぼ普通の生活が出来ることになります。
生活していくために、仕事をすることも可能です。
傍目からは、「執行猶予」イコール「条件付き実質無罪」のようにも映ります。
先週の記事も触れましたが、
日本では薬物への認識が甘いように感じられてなりません。
おとといの夜に見たワイドショーでは、スタジオゲストコメントに加えて、恒例の「街の人の声」を拾うインタビューも一緒にオンエアされていました。
この日の質問では、「薬物という重大な犯罪」に対して
「初犯であっても(執行猶予なしで)即懲役刑にすることに賛成か?反対か?」
を問うていました。
一応テレビらしく、街頭風景では「賛否両論」が同数ずつ紹介されていました。
賛成意見をひと言でまとめれば、
「執行猶予がつく限り、この種の犯罪は防げない。抑止力保持のために罪を重くすべき」
というもの。
これに対し、反対意見は、
「本人内部の問題で、直接他人を傷つけるなど迷惑をかけたわけではないので、即懲役は重すぎる」
「誰にでも間違いはある。初犯であれば、執行猶予で反省・更生の機会を与えるべき」
というものでした。
「街角インタビューのメッカ」渋谷における、一般人の意見です。
もちろん編集がなされているので、これだけではどちらが優勢か判断することは出来ません。
番組では、生放送中に視聴者アンケートも同時実施。
それによると、約6000通の回答のうち4分の3ぐらいが「即懲役に賛成」という意見でした。
海外では、薬物依存に対して死刑を含む極刑を課している国もあるくらいです。
薬物を使用すれば、心身ともに「異常な状態」になることは間違いない。
そこでは「人間としての正常な判断力」も、おそらく失われているのでしょう。
「他人に傷害を与えてはいけない」という当然すぎる常識が、果たして理性で抑えられるものなのか?
異様な精神状態に陥ったがゆえに、二次的な事件が起きる可能性は、何倍も高いのでは?と思います。
起きてしまってから「再発防止策」とやらを検討するのでは遅いのです。
昨日の朝この記事を書いているので、ニュースの集中するこの土日でどんな議論が交わされるかは聞いていません。
でも、芸能界の同業者たちから「きっと発せられるであろう」と現時点で容易に想像できるコメント。
それは、
「あれだけの才能を持ったミュージシャン。彼の音楽は好きだし、今回の事件で歌が聴けなくなってしまうのは寂しい」
的ニュアンスの意見です。
さらにエスカレートして、
「できるだけ早い時期に、ぜひ復帰して欲しい」
との意見も出かねません。
1990年にデビューした彼は、
「どんなときも」のブレイクをきっかけに、「もう恋なんてしない」「冬がはじまるよ」「No.1」「北風」「遠く遠く」などの大ヒット曲を連発しています。
初犯後、執行猶予が明けた直後の2003年には、平成最大のヒット曲「世界でひとつだけの花」を生み出しているソングライターでもあります。
歌作りを手がける者のはしくれとして、その「音楽性」だけを切り取れば、高く評価するところはあると思っています。
いくら事件を起こしても、彼の曲を聴いて育ち、純粋に「イイ歌だなぁ」と感じた人たちの意識から、その歌が消えることはありません。
数限りなく収載されているカラオケリストから、彼の曲が抹消されることもありません。
話題が事件に及ぶたびに、バックにはかつてのヒット曲が流れる。
期せずしてひとつの「宣伝」のようになっているのも、なんとも皮肉な現象です。
大騒ぎしておきながら、今後の捜査の展開次第で「嫌疑不十分」⇒不起訴になる可能性もあります。
ただ、「2度目」ということでのイメージダウンは避けられない。
しかしそれ以上に、「何度目であろうと」数年経ってほとぼりが冷めれば、何事もなかったかのように普通にふるまえる。
それが「ザ・芸能界」なのかな、とも思います。