さえわたる 音楽・エンタメ日記

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「住みたい街ランキング」の不思議。基準は「駅」単位。だとしたら上位の街は本当に「住める」のか?

「住みたい街ランキング」。

マスメディアでも、よく取り上げられるワードです。

 

住宅・不動産会社「SUUMO」が発表した関東版「総合ランキング」によると、

 

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1位から10位までは、以下の名前が挙がっています。

(近畿版・中京版など、ほかのエリアのランキングもあるのだと思います)

 

1位:横浜  (神奈川)
2位:恵比寿
3位:吉祥寺 
4位:大宮  (埼玉)
5位:目黒 
6位:品川 
7位:新宿
8位:池袋 
9位:中目黒
10位:浦和 (埼玉)

 

「関東版」といえば対象は1都6県あるはずなのですが、10位までのうち7つは東京都内。

神奈川が1つ、埼玉が2つ。

ほかの県の街はランクインしていません。

 

このランキングには「関東版」のほかに「各都県別」もあります。

 

「東京都版」に限ってランキングを見ると、

1位:吉祥寺 (総合3位、以下同様)
2位:恵比寿(2位)
3位:池袋  (8位)
4位:目黒  (5位)
5位:品川  (6位)

6位:中野  (圏外)
7位:新宿  (7位)
8位:立川  (圏外)
9位:荻窪 (圏外)
10位:中目黒 (9位)

 

都内限定だと、「総合ランキング」と若干順位が入れ替わります。

 

「総合ランキング」のサンプルは、回答者の住所は不問。

これに対して、「各都県別」の方は、そこの在住者が対象となっています。

 

ですから、 

東京版のランキングと言えば、「東京都民」が選んだ「都内で住みたい街」ということになります。

都内在住者が選ぶランキングなので、より生活密着型の現実的なランキングと言えるのかもしれません。

 

と言いつつ、ランキングはあくまで

「住みたい」

という、いわば「あこがれ」

 

名前が挙がるくらいですから、出かけたことぐらいはあるかもしれない。

しかし、実際に生活した実感ではない。

ですから、その選考基準は「イメージ先行型」になりがちです。

 

総合ランキングでトップ3に入った街の選考理由を見ると、

横浜

  • 交通のアクセスの良さ
  • 買い物の便利さ
  • オシャレ
  • 洗練されている
  • 歴史を感じる

恵比寿

  • オシャレ
  • 洗練されている
  • 落ち着いている
  • 飲食店が多い

吉祥寺

  • 街と緑のバランスがいい
  • オシャレ
  • 交通利便性が良い

具体的な基準があまり見当たらない感じがします。

 

共通して「オシャレ」という言葉が入っています。 

そもそも「イメージ調査」なので、「オシャレ」とひと口で言われてもピンと来にくいところがありますが、それはある程度納得するとして…

 

ここで私が注目したいのは、

この調査での「住みたい街」とは「駅単位」を指す

という点です。

 

街のシンボルと言えば、やはり鉄道の「駅」です。

確かに、駅を中心に街並みが広がるケースが通常です。

 

この観点で改めてランキングを見てみると、

「実際に人が近隣に住めるとは思えない駅」が数多く入っている

ことに気づきます。

 

たとえば、

総合1位の横浜を「駅」として考えた場合。

 

横浜駅と言えば、通勤・通学客のターミナル駅

プラス商業施設の集積地。

 

決して「住む」のに適した場所とは思えません。

東京だったら、「東京駅近辺に住む」と言っているのと似ています。

駅近で住む物件を探すこと自体、現実的ではありません。

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そもそも、「横浜駅」と答えてしまっている時点で、「大ざっぱ」過ぎます。

 

近畿圏で「住みたい街」を訊かれて「大阪駅」と言っているのと同じです。

大阪府内には、さまざまな顔を持つたくさんの市、街や駅があるというのに・・・

 

選考理由の「オシャレ」「洗練された」とは、具体的に何なのでしょうか?

 

おそらく、実際に「住む」というよりは、「観光スポット」としてのイメージから挙げられているように思えます。

その観点において、横浜市内で具体的に「街」の単位でエリアを言うなら、ベイサイドのみなとみらい駅馬車道駅」「元町・中華街駅あたりが該当しそうです。

しかしそれでは、駅名を言われても全国レベルではピンと来ない!

 

「市内の繁華街のイメージが好き」ということであれば、該当しそうな駅として関内駅伊勢佐木長者町駅」などがあります。

 

あるいは、本当に「住む」ことを考え、横浜市内を通る東急・田園都市線沿線の、まさに「オシャレ」な住宅地の風景を連想してのことかもしれません。

だとしたらそれは「横浜駅」ではなく、たまプラーザ駅青葉台駅といった駅名になるはず。

観光スポットの駅以上に、それではあまりに知名度が低くなってしまいます。

 

そうしたさまざまなイメージをすべてひっくるめて

「1位:横浜(駅)」

と呼んでしまっている気がします。

「細分化」されていないのですから、1位になるはずです。

 

saewataru.hatenablog.com

 

2位の恵比寿も、都心・副都心からはやや外れているものの、「商業施設」の街。

住むにしても、マンションならば近隣にあるのでしょうが、一戸建ての住宅が集まっているような、いわゆる「住める街」ではありません。

 

3位の吉祥寺になって、ようやく真の住宅地=「住む環境の整っている街」かな?という印象になります。

 

「池袋」や「新宿」のような「大都会」の真ん中は、街の事情を知っている人から見れば、そこは仕事や買い物に「出かける」場所であって、「住みたい」とは言えないのではないか?

ということで、ランキング上位には入っていないものと思います。

また「イメージ」だけで選ぶのであれば、渋谷・六本木・青山・麻布十番といった「オシャレ」とされる街がまったく入っていないのが、個人的には不思議です。

 

SUUMOだけでなく、各社が独自の視点で「住みたい街」を発表しています。

微妙にランキングは異なっていますが、名前が挙がる街はだいたい共通しています。

 

というわけで、この種の調査は

実際に「住みたい」「暮らしたい」のではなく、単に「オシャレそうであこがれる街」

なのではないか?と感じた話でした。