さえわたる 音楽・エンタメ日記

オリジナル作品紹介、歌の解説、ヴァイオリン演奏、言葉の使い方、エンタメニュース、旅行記などについて綴っています

第70回紅白歌合戦。10個のポイントから総括してみた

昨年末に、レコ大に関する記事を書きました。

放送前に、Fooringの最年少受賞もあるか?と予想(?)したところ、その通りになりました。

 

「分母」は必ずしも相応しくなかったけれど、その中でも審査関係者に少しばかりの「良識」を感じた瞬間でした。

saewataru.hatenablog.com

 

そして、「紅白」。

 

紅白の感想記事は、すでに放送直後の時点であらゆるネットニュースにあふれていることと思います。

しかし、音楽ブロガーのひとりとして、レコ大同様、時代が変わったとは言えいまだ年末の一大イベントである「紅白」にも、この機会に触れておきたいと思います。

 

1.2019年の代表曲がないことを改めて痛感した

これは今回に限った話ではありません。

レコ大の記事でも述べたように、ヒット曲が「個別化」「分散化」する中、老若男女問わず誰もが知る歌は生まれない時代になりました。

「今年はやっぱりこの曲だったね!」と言える曲が出ない。

 

出場者の顔ぶれはここ数年でだいぶ変化し、全体的に若返った印象もいくらか感じられます。

しかし、現役で活動するアーティストでも、披露される曲は発売年に関係ないその人の「代表作」ばかり。

最も「現役感」が強いはずのAKBや乃木坂・欅坂・日向坂に至るまで、歌われたのは「古い曲」でした。

「最新のヒット」より「耳馴染み」を優先した結果だと思います。

 

国営放送のパワーで、どれだけビジュアル的に派手なステージ構成を繰り広げても、肝心の「歌」で感動させる要素がなければ、効果はありません。

 

2.「メドレー」「スペシャルバージョン」だらけの選曲だった

 「〇〇スペシャルメドレー」が目立つのも、ここ数年の特徴です。

「Fooring」、冒頭の「パプリカ」から、ふだんは聴かれない英語バージョン。

AKB48、「恋するフォーチュンクッキー」は、何か国語が登場したのでしょう?

「お祭り」だから、それもイイのかもしれませんが…。

 

「最新作」をちょっとだけ歌って、あとは古いヒット曲…というパターンも目立ちました。

それなら、ヒットした有名な曲の方だけ聴いた方がマシかも?と感じました。

「ゆず」は、「SEIMEI」ではなくいっそのこと「栄光の架橋」を全部聴きたかった。

Perfumeは、ほとんど歌のない前振り(的に聞こえた「Fusion」)はカットして、懐かしい「ポリリズム」に時間を充てて欲しかった。

MISIAは、紅組トリなのだから「Everything」をリズミカルにいじるのではなく、本来のバラードアレンジで聴かせて欲しかった。

 

3.「特別企画」の名称は意味不明だったが、歌は良かった

「ディズニーシリーズ3部作」は、今年を象徴する作品として、映画の素晴らしさとともに歌い継いでいって欲しい歌だったと感じました。

「YOSHIKISS」、コアファンでない私は、YOSHIKIがこれほどまでに「大物」扱いされるところがイマイチ理解出来ていませんが、コラボ自体はユニークで目を惹くものでした。

ビートたけし、あの味わいは芸人だけでなくてもグッと来る歌唱だったのでは?本人作詞・作曲の歌なのに、途中伴奏より1泊早まって歌ってしまったりして、あのたけしでも緊張するのかな?と。

竹内まりや、ステージとは別の場所だったので、最初収録かと思いましたが、歌唱後のやりとりでナマ歌と判明。本人作曲の作品ではなかったけれど、なぜか「深かった」!

松任谷由実、30数年前に書かれた個人的にユーミンソングNo.1の「ノーサイド」が、このタイミングで聴けたことに、感慨いっぱい。松任谷正隆が電子ピアノを奏でる「婦唱夫随」のサウンドも良かった。

 

4.初出場でも素晴らしかった3組

Official髭男dism」、昨年たくさんヒットした中の代表作「Pretender」をMVでなく初めてナマで聴きましたが、レコーディング音源と変わらぬクオリティーに改めて感心!

King Gnu、「白日」のパフォーマンスで見せたあの独特な世界観は、これまでのJ-POPシーンでは味わったことがない稀有な存在でした。

菅田将暉、あんなに緊張している姿を初めて見ましたが、彼の個性に合う作品に巡り会えたこと自体はとても良かった。

 

5.持ち歌を披露出来ないのは気の毒

Hey! Say! JUMP、熾烈な「ジャニーズ枠」の中から出場を果たしたのはラッキーだったかもしれませんが、彼らに「上を向いて歩こう」を歌わせるのは、いくらスタンダードナンバーと言っても時代錯誤過ぎるのでは?

「島津亜矢」、2018年は「時代」、そして今回は「糸」。着物姿の演歌歌手は、何でも器用に歌いこなしますが、中島みゆき作品はやはり本人バージョン。いっそ彼女の得意とするホイットニー・ヒューストンを選んだらいいのに、とさえ思います。

 

6.純粋に「歌を届ける」演出ではあったが

今年はラグビーワールドカップとディズニー映画のヒット。

これが演出上の「二枚看板」だった気がしますが、VTRやインタビューに時間を充て過ぎることなく、全体的には「歌そのものを届ける」ことに気を配った構成になっていたと思います。

ただし…

水森かおり、巨大衣裳(セット?)による小林幸子のマネから脱却したと思ったら、今度はイリュージョンとのコラボ!歌が何だったのか覚えていません。

三山ひろしのけん玉企画も残念!「二匹目のどじょう」は狙ってはいけないのです。本人も観客も、本来の歌に集中できません!

 

7.演歌劣勢。中高年層の紅白離れが進みそう

演歌ジャンルの出場歌手枠が、年々少なくなっています。

また、気づきにくいことですが、彼らへの時間配分もさりげなく圧縮されています。

演歌は3番まであるのが標準ですが、普通の歌番組ではワンコーラスカットでツーコーラス分(1番と3番)を歌います。

ところが、紅白バージョンではさらにカットされ、1番&ハーフの時間しか与えられません。

演歌=中高年と必ずしも直結は出来ませんが、NHKの貴重な視聴者層の紅白離れを一層招きそうな印象でした。

高齢化が進む中、彼らの受け皿役は、30年40年前のヒット曲を歌い続ける郷ひろみ松田聖子なのかもしれません。

 

8.「あと1秒の余韻」がとれない大忙しの進行

メニューが盛りだくさん過ぎて、「決められた台本通りに進めなければ・時間内に納めなければ」の慌ただしさがひしひしと伝わってきてしまっていました。

 

歌い終わったあと、聴き手には味わいたい「余韻」があります。

しかし、その1秒のいとまもなく「ありがとうございました。続いては…」の声にかき消されてしまう。

 

数年前、照明を真っ暗にして歌って登場した美輪明宏のステージは、「お祭り騒ぎ」とはまったくの異空間を作り出しました。

前回米津玄師が別会場で、ホールの喧騒とはかけ離れた「静寂の空間」での歌唱を繰り広げました。

そうした「じっくり・ひっそり1年を振り返る」瞬間が、今回は感じられませんでした。

 

9.嵐はそんなにすごいのか?

国立競技場を舞台に歌った「カイト」は、元歌を知りませんがほぼフルコーラス。

そして、大トリは上述の「メドレー」で、デビュー曲と最新曲を披露。

白組司会のポジションも占め続けている。

 

個人的に、嵐がキライなわけではありません。

活動が今年いっぱいだから、なのもよくわかります。

しかし、「大物」と呼ばれる歌い手も揃う紅白の場で、これだけ盛り立てられ続けるアーティストを、ほかに知りません。

 

 10.もはや「勝負」「合戦」ではない

番組スタート以降長らく、「紅」対「白」の対戦形式にすることがコンセプト。

構成上の「大前提」でした。

しかし、今回歌手同士の「対戦色」は一切感じられませんでした。

もう、その形式でOKなのだと思います。

 

それぞれ違った持ち味のある個々の歌い手。

「紅」「白」のどちらが優れているか、客観的に評価すること自体出来ないはずなのです。

番組名が「合戦」なので、どちらかを「優勝」させないと締められないのはわかっていますが…

 

 

以上、非常にざっくりとですが、私なりに総括してみました。

ブクマ・ひと言でもコメントをいただけたら、とてもうれしいです。