本格的なヴォーカリストの歌を聴きたい~ポイントは3つ
ヴァイオリンを習っていたら「クラシック音楽」ばかりに興味が行きそうなところです。
事実、学生時代に所属していたオーケストラメンバーたちのほとんどは「クラシック・いのち」。
極端な話、「クラシック以外は音楽ではない」的考え方の持ち主もけっこういました。
そんな中、歌番組に夢中になっていた私は「異端児」の部類だったかもしれません。
クラシック・ポップスの「両輪」に親しんできた私ですが、ブログの過去記事の通り、「演奏」はクラシックでも「鑑賞」に関してはポップスにかなり傾いています。
「はやり歌とともに」連載を延々続けている所以です。
(同じ歌でも、クラシックのオペラはあまり積極的に聴くことがありません)
幼い頃、おじさんおばさんたち世代の人が、最新のヒット曲には興味を持たず懐メロばかりを好むのかが不思議でした。
自分は、オトナになってもその時その時の最新作が好きになれると信じていました。
しかし、十分なオトナになった今その確信が揺らぎ始め、気づけば頭をよぎるのは、十分な「懐メロ」である70年代80年代、せいぜい20世紀末までの歌ばかり。
そう感じてしまうのは、なぜか。
「楽曲そのもの」よりも「歌い手」の方に原因があるように思えてきました。
「歌唱力で勝負できる歌手」が評価されない時代になってしまっているからではないか?と。
多人数グループによる「学芸会的お遊戯のかわいらしさ」や「リズムと『ノリ』重視のダンス・パフォーマンス」「高音でのシャウト」ばかりがヒットの条件になり、歌唱自体=「単独で歌をどれだけじっくり聴かせられるか」は二の次になっている気がするのです。
今でも、ソロでやっている人はウマイです。
グループばかりでソロがほとんど現れないのは、「ひとりにさせたら歌えない」からではないか?とイジワルなことも考えてしまいます。
では、自分なりに「歌唱力がある」=「歌がうまい」と評価できるポイントは?
言葉で説明できる範囲であえてまとめれば、以下の3つです。
1.ワンコーラスの中で、Aメロとサビを「抑揚をもって歌い分けられる」
通常の楽曲の作りは、冒頭Aメロは静かに抑えめに入り、徐々に盛り上げていって、サビで張り上げるように出来ています。
そのメリハリを効果的に表現できる、「山場で十分に声を張る」ことの出来る歌い手になかなか巡り会えません。
2.長音を伸ばし、ビブラートがかけられる
「声を張る」こととも関連しますが、長い音符を一定の声量を保ったまま伸ばせること。
さらに、「表現力」を増すためにビブラートがかけられると効果的です。
これは楽器の演奏にも通じますが、ビブラートがあるとないとで、音色の味わいは驚くほど変わってきます。
一方、それが出来るには相応のテクニックも必要ではあります。
(最近のはやり歌では、それ自体あまり求められていない条件のようですが…)
3.地声とファルセットが巧みに使い分けられる
男女とも、高音部になると地声を張れなくなり、ファルセット、いわゆる「裏声」状態になるのですが(特に女性)、十分なヴォイストレーニングが出来ていない歌い手は、ファルセットになったとたん、極端に声量が弱くなります。
そこで地声に劣らない声量が確保出来るかが、聴きやすさにもつながると考えます。
現在、何十年も前の歌でも、動画で容易に振り返ることが出来る時代です。
それらを見ていると、贔屓でも回顧主義でも何でもなく、当時10代20代の若さだった、いまや懐メロ歌手と呼ばれる人たちの歌唱力の高さ(アイドルと呼ばれていた人も含め)に驚かされます。
もちろん、評価基準は上記3つのポイントに限りませんが、好き嫌いを超越して「さすが素人とは明らかに違うプロ!」と唸らせるパワーがあるのです。
だからこそ、時代背景だけでなく誰もが知る(そして感銘する)「国民的ヒット」として、万人の印象に残る曲が生まれたのではないか、と。
さて今後、ホンモノの「歌声」に出会える日は来るのでしょうか…